馬乃

怪物の馬乃のネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

「 怪物 」
母親、教師、子供の視点を基に物語を繰り返し描くことで、徐々にある事件の真相が炙り出されていく。

物語が進むにつれ、それぞれの視点で何が起きていたのか、何が“怪物”であったのか、社会の理不尽さと人の傲慢さ、誰しもが加害者になり得る無自覚の加害性に気付かされる。と同時に、私達は、自分の固定観念や指標に反する相手を、“怪物”だと決めつけたり、社会生活の中で関わる人や環境から影響を受け、自分を“怪物”だと思い込む。自分の中にある固定観念と指標で他者を見定め、曖昧な情報と勝手に関連付けした思い込みで判断することの、“無自覚の加害性”は時に人や自分をも追い詰める。

人は固定観念や指標、信条、偏見、地位、外見、言動、評判、過去の情報を基に、無意識にまたは、意識的に他者をカテゴライズして見定める。が、その人の本心や内面、真実は理解らない。理解したつもりになっていることが殆どで、全容を知ることは到底不可能なのだと、映画を通して自身の傲慢さを突き付けられる。
他者に対する疑念や恐怖を払拭する為に、自分にとって都合の良い“理想/怪物”を他者に押し付けていないか、自戒も込めて、自身にも今一度問い直したいと思った。二人にとっての“希望”が、二人にとっての“救い”でありますように。そう願わずにはいられない映画でした。
馬乃

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