はらぺ

怪物のはらぺのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「君はすごい技を持っています。君は敵に襲われると体中の力を全部抜いて諦めます」「技じゃないよ」「痛みを感じないようにするの👼🏻」「技じゃないよ...僕は、星川依里くんですか?」

言った湊も、言われた依里も、どんな思いなのかと考えただけで胸が締め付けられて苦しくなった。
「みんなの前で話しかけないで」「わかった、話しかけないよ」のやり取りも同じくらい切なかった。そう言うしかなかった気持ちがよくわかる、子供の世界は狭いんだよね。

車から飛び降りたのも、絵の具の雑巾を渡した後で掴みかかったのも、足に怪我をさせちゃった後の廃電車での出来事にも、胸が苦しくなった。

(レビューに書くことでもないけど、依里がいつも何かをブンブン振り回してるのを見て、自分も子供の頃登下校のたびに何かを振り回していた気がして、防犯用グッズで学校から持たされていたイーコールというオレンジ色の笛の存在を思い出した。家の鍵と一緒に首から常にぶら下げてて、登下校のたびにぶんぶん振り回してたなぁ〜
校長先生が廊下の床を削ってるのを見て、うわぁ〜ワックスが汚くなって削るやつやったな〜と思い出した。
あとあまりにも諏訪すぎて、鑑賞にあたりややノイズだった。全く知らない場所の物語がよかったなぁ、とか。)

子役の2人が、しっかり俳優だった、、、、
また他の作品で見たい。

映画を見てる間ずっと、校長先生が不気味で気持ち悪かった。中村獅童演じる依里の父が理解できなくて憎かった。

結局孫をひいてしまったのがどちらなのかは知らされていないのに、孫をひいたのは校長先生だと思われたままだった。「お孫さんをひいたの、校長先生らしいですよ。」の一言を、なぜ信じられると思ったのだろう。なぜ信じてしまうのだろう。
依里の父は多分どう見たってクズで子に対する発言や虐待は正当化できないけれど、もし本編で中村獅童目線の映像を見せられたとしたら受け取る印象は少しは変わったのではないか。
逆に瑛太演じる保利先生はただただいい先生なのに(男らしくないぞ〜とかいう点はさておき)、誤解を解くチャンスも与えてもらえずに保護者や彼女や学校から見捨てられてしまって可哀想だと思った。でも生徒のアンケートの回答は違った。「保利先生、キャバクラ通ってるらしいよ〜嫌だね」と聞いていたのか、他に決定的な何かあったのか。子供はちょっとしたことでも大人のことを信用できなくなるものだよね。もし子供サイドの映像を見せられたとしたら、保利先生への印象はさらに一転したのかもしれない。


それで、じゃあ怪物って結局誰だったんだろ。


ラスト、水路を抜けた先の明るくて眩しい緑の世界が本当に綺麗で綺麗で....
「生まれ変わったのかな?」「そういうのないと思う」「そっかぁ、よかった〜」みたいな笑顔のやりとり、なんだか嬉しかった。

何を思ったかは自由だと思うから何を思ったか書くけど、

そうそう、子供の頃に生きる世界って本当に本当に狭いのに広いと思っていて、近くにある山に足を踏み入れるだけで別の世界にいけると思ってて、ずっとずっと歩いて行けば誰にも見つかることのない遠くの世界に行けると信じていたんだよなぁ。友達が電車で1時間先の市や隣の県に引っ越してしまうことはもう一生会えないことを意味したんだよなぁ。今なら違うと分かるのに。近くの山を越えた先は異国だと思っていたけど、そうじゃない。どこまでも歩いて行けば、別世界にたどり着くと思っていたけど、そうじゃない。
子供たちはいつか、ただ永遠に広いと思っていた自分の生きる世界が狭いことに気づくんだよね。私も子供から少し大人になったとき、広くて途方もないと思っていた世界(だと思っていた場所)はめちゃくちゃ狭かったことを知った。世界ってもっと外にあって、その広い広い世界の中のいかに狭い場所で生きてきたかを知った。でも大人になっても、人はつらいとき、今見えている世界が全てだと思い込んでしまうんだよね。このつらさや理不尽な世界から抜け出せないと思ってしまう。私たちが生きなきゃいけない世界は結局のところいつまでも狭くて、自分の見えている世界しか見えなくて、だから逃げ場なんてないように思ってしまうけど、きっと世界のどこにでもどこかに、逃げ場や救いはあるんだよね。
と、綺麗で眩しい映像を見て思った。映像が綺麗で、2人の少年が笑顔で、坂本龍一の音楽が心に沁みて、涙が溢れて止まらなかった。

世界って、もっともっと綺麗なものだと思ってた。綺麗であってほしい、と思ってたんだよね。大人が助けてくれると思ってたんだよね。泣いてる自分を見つけていつか誰かが救ってくれると思ってた。でもそうじゃないことにいつか気づく。その瞬間が絶望でもあり希望でもあるんだよね。
何言ってんだろってかんじやと思うんだけど....本当にそうやって生きてきた。気がする


この2人はきっとこの後また狭い世界に戻らないといけなくて、離れ離れになってしまうんだろうなと思うしその後2度と会うことはないのかもしれない、幸せに生きていける保証もないわけだけど。生まれ変わることなく、どうかどうか大人になれますようにと願わずにはいられなかった。
はらぺ

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