ヤンデル

怪物のヤンデルのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
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・カンヌ映画祭では坂元裕二の脚本賞とともにクィア・パルム賞(LGBTなどより広義の性的マイノリティを指すクィアをテーマにした作品に与えられる賞)を受賞している。

・星川がビルの放火に至った原因としては、保利先生が「豚の脳味噌…」などと発言したのは嘘だった→本当は星川の父親の発言→保利先生が放火発生時にガールズバーにいたのも嘘→実際にガールズバーにいたのは星川の父親→星川は湊に「お酒を飲むのは健康に良くない」と言っていたことから、自分が父親につらく当たられていたのはお酒のせいと考えている→父親がお酒を飲んでいるガールズバーをなくすべき…が動機につながっていると推測できる。また、保利先生が星川家を訪ねた際も父親は酒を持っていた。

・見どころのひとつとしては、保利先生が体育のシーンなどで「男だろ」「男らしくない」などの言葉を何気なく使うことで、星川は先生にいじめを訴えられなくなっている。一方で、湊(みなと)の母親、麦野早織は湊に「結婚して家庭を築くまで育てると父親に約束した」と告げたことが、湊が男の子を好きになるという性自認の足かせになっている。つまり、悪気のない偏見による何気ない一言が、当事者にとっては彼らを精神的に締め付けている要因になっている。

・「怪物当てゲーム」でナマケモノのカードを持った湊は、星川に「力を抜いて攻撃を効かなくする」とヒントを言い、湊は「星川くん?」と言う。このことは星川が、自分の感性を鈍くすることでいじめや父親の虐待から身を守っていたことを示唆しているように見受けられる。

・音楽を担当した坂本龍一は2023年3月28日に死去。本作については、「誰が怪物かというのはとても難しい問いで、その難しい問いをこの映画は投げかけている」とした上で、「救いは子供たちの生の気持ち。それに導かれて指がピアノの上を動いた」とコメントしている。
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