りょう

怪物のりょうのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.4
他人が怪物に見えることがある。本人はそうなっている自覚もなく、怪物なわけじゃないんだけど、その状況やその角度から見ると、そう見えてしまうことがある。
湊の母親も、湊も、依理も、保利先生も、校長先生も、本人から見えている景色と周りから見える景色が全く違う。

そういった誤解が人を傷つけたり、苦しめたりする。特に思春期の入り口にいる5年生にとっては周りからどう思われるかが一大事。

後半になるにつれて、片方の靴、水筒の中の泥、湊が髪を切った理由、走っている車から飛び出した理由などが明らかになっていき、それとともに「穿った見方」ができるようになる。ここでいう「穿った」は適切な意味で使ってます。

色んな意味で解釈できるラストでいつも通り是枝監督の作品だな、そしてどんどん引き込まれるストーリーはさすが坂元裕二。キラキラした描写に坂本教授の音楽。三人の日本最高峰の腕利きシェフが力合わせて作ったスープはやっぱり美味しかった。

加えて俳優陣がみんなすごい仕事をしていた。その中でもやっぱり湊と依理の2人、特に湊役の黒川想矢くんにめちゃくちゃ引き込まれました。

間違いなく日本が誇るべき映画の一つだと思いました。

最後に、これはとても個人的ですが、湊や依理と同じく小学校5年生の息子がいます。子どもは結構簡単に嘘を付きます。嘘をつくことを叱っても平気で嘘を付きます。たまに何のためにそんな嘘ついたの?という意味不明な嘘も付きます。だけど本人にとってはすごく意味のある嘘だったのかもしれない。この映画を観て、親から見えている子どもは本当に一部なのかもしれないと少し怖くなりました。
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