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怪物のiamのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

物語のなか出てくる、金管楽器の不協和音を聞いた時にその音が何かに似ている気がした。なんだろうなんだろうとモヤモヤしながらずっと考えていたが、家で鼻水をかんだ時にひらめた。これだ。あの音は、人が勢いよく鼻をかむ時の音に似ている。スッキリした。肺の中にある空気をおもいっきり外に吐き出すという同じ行為なので、音が似ているのは当然と言えば当然かもしれない。ただ僕が感じた共通点はそういった現象的なものではない気がしていて、それがどちらも溜まった不快感を全力で吹き飛ばそうとする行為であるという部分な気がする。心に溜まった苦しさ、鼻の中に溜まった鼻水。それを全部ふーっと吹き飛ばす行為。あの怪物の咆哮のような音は人間が何かから解放されようと奮闘する音なのかもしれない。

また、「群盲、象を評す」という言葉を思い出した。インド発祥の寓話で、数人の盲人達が1匹の象の牙や足などの体の一部分を触って、それぞれ感想を語り合うというものだ。盲人達は違う部分を触っているので、述べる感想は全く噛み合わない。この映画で起きていることも同様のことが起きているのではないだろうか。同じ物語でも、見る視点が変われば、感じ方は違う。どの解釈も正しいし、ある意味間違っている。自分の見える範囲でしか物事の判断をできないという意味では、僕らはみんな盲人だと言えるかもしれない。
そして、盲人は決して自分の姿を見ることはできない。自分自身だって、ひょっとすると怪物の姿をしている可能性があるということを忘れないようにしたいと強く思う。
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