エイコ

怪物のエイコのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.1
Eテレで、「Q」という子供のための哲学番組がやっていて、小3の息子と一緒によく見ている。
先日は「良いこと、悪いことってなに?」という回だった。
オオカミが子ヒツジを襲っているところを見た村人が、弓矢を放ってオオカミを追い払ったという話で、「村人はいいことをしたのかな?」という問いがあり、私の息子は割とすぐに「いいことをした」と答えた。
番組は、「オオカミはおなかを空かせた子供たちのために狩りをしていたのかもしれない」と立場を変えた見え方を示し、それを見た息子も、考え方を見直していた気がする。


「怪物」を見た時、のんびりごはんを食べながら息子と見たこの番組をなんとなく思い出した。
立場を変えるとものの見え方が全く変わってくる。

私は割と白か黒かとジャッジすることが苦手で、曖昧に考えることが多いのだけど、それでも偏見を持つことはたくさんある。
なので、言葉や態度できっと誰かを傷つけているだろうとは思っているけれども、この作品でその考えを改めて突きつけられた感じがする。


鑑賞後に感想を語り合いたくなる映画、と耳にしたけど、作品考証的なことはあまりしたくないなと思った。
それはこの物語の中で起きていることをエンターテイメントとして消化したくないからかもしれない。

日々暮らしていく中で起こった出来事の因果関係なんてわからないことが殆どだし、悪者(怪物)はだれだ、なんて追求することを目的とする映画ではないだろう。

それにしても是枝さん、思春期の子どもたちの感情の暴力的な爆発や揺れをなんて巧みに描くんだろう。
儚くてきらきらしていて、最後はぽろぽろ泣いてしまった。

脚本の坂元さんとの親和性は抜群だったし(想像した以上に!)、演者さんたちも期待を裏切らなかった。
田中裕子さんほんとにすごかった…。
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