鰤鰭

怪物の鰤鰭のネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

面白ーい。好物の半分くらい意味が分からない系映画。解釈の余地がありまくり。それを生み出しているかなり緻密に設計された脚本とモチーフやワード配置。きっと繰り返しの鑑賞でさらに気付きがあって面白くなる。

語られる視点が変わる度、先入観が二転三転する3幕構成の羅生門スタイル。特に2幕目までは吉田恵輔作品のような人の嫌なコミュニケーションを味わえる。でもちょっと人物の違和感を場面場面で誇張して描き過ぎかも?観客への先入観の与え方に少し作為性がある感じはした。

安藤サクラが学校側へ訴えるシーンのタメ口の切り方とか、やっぱり上手いなー。
ここの書類を投げつけるところもそうだけど、他にも自然な流れの中に意表を突く、ちょっとドキッとする仕掛けを入れるのが抜群に上手い。

電車の窓に泥が溜まって、それを内側から撮るあの画が天才的。泥に降る雨粒とそれを掻き分ける手、やれどもやれども雨が降り注ぎ中が見えなくて、少し間があって諦めたのかと思いきやその後窓ごと開く。この一連の流れが見事。このショットが映画全体のテーマを表している気さえする。

坂本龍一の音楽もベストマッチ。エンドロールに入るまでのラストの流れの美しさ。
天気と時間軸、草地と線路、トンネルのロケーションを考えると、二人はもう今までとは別の世界に旅立ったように見えた。
子供の頃、自分もよく秘密基地を作って友達と遊んでいたのを思い出す。空き地や庭にやたらとテントを張ったりかまくらを作ったりして、そういう子供だけの空間、世界を求めていたのかも。不条理な世界から解放されて、ようやく二人だけの世界に行けたラストなのかな。

以下、分からなかった伏線や表現
・"保利"のせいだと皆が嘘をついたのはなぜ?口裏合わせるような感じだったか?
・消しゴム拾い一時停止には意味合いがあるのか?
・火事とチャッカマンはミスリードで、結局出来事としては直接関連は無いのかな。
・チャッカマンの持ち主の変化。どこのタイミングで、なぜ渡したのかな。
・沈没病?ああいう病気?の金魚ってホントにいるのだろうか。
・作文の頭文字、何て書いてたんだろう。全文は見えなかった気がする。「むぎのよりほしかわ」?
・紙に包まれたカッターナイフの意味は?そして保利はどうしてその事実を知っていた?
・服のまま風呂に入ってた理由と、どうやって家に侵入できた?鍵かけてないんか。

【鑑賞回数】1
【鑑賞履歴】
・2023/6/14 🎞️TOHOシネマズ川崎
鰤鰭

鰤鰭