すあまさえ

怪物のすあまさえのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.3

とても面白かったですね。

原作があるんだね。未読だけど、是枝監督が大幅にオリジナルにしているみたい。推理小説らしいから、この構成に納得。

原作読んでないけど、何というか、是枝監督が撮りたいもののエッセンスが詰まっていたのかなって。

家族、友情、正義、真実。愛、人間、子ども。
まだまだもっとあるんだけど、是枝監督って、そういうものを撮るじゃないですか。
今回の作品にも詰まってるなぁって。

こういう映画を観るといつも感想が同じになっちゃうんだよね。

自分の事を理解してくれる人、愛してくれる人が1人でもいれば、人は強く生きていける。その人との強い絆や愛が自分を癒してくれる。人生の一瞬でもいい。年齢や性別は問わない。人間じゃなくても良かったりする。
その経験があれば、辛いときも乗り越えられる。人生の糧になるから。

だから、2人がやった事は全部を丸呑みにして肯定はしにくいけど、それでも、あの2人にとってはかけがえのない時間だったと思う。

まずそういう事を思う。

そんで、結局何も解決してないんだよね、って思う。

2人はあれから家に帰って、心配されて怒られる。そこまではいい。

星川くんは帰ったらまたおしおきされるんじゃないかと思うし、おばあちゃんの家に引っ越しちゃうんでしょう。
おばあちゃんの家が安全かどうかもわからないじゃない。そんな事は思いたくないけど。

次の学校でもベビースターラーメンを食べたりしたら、また変わり者として虐められちゃうかもしれない。

湊は変わらずあの学校に通い続けるわけで、星川くんが居なくなってもまた誰か虐められた時、どんな行動を取るんだろう。大丈夫かな。

確かにあの日をさかえに2人は生まれ変わってるかもしれないけど、現実は昨日の続きなわけで。
子どもにとって学校はほとんど世界だから、1人が変わっても世界が変わるとは限らない。

大体こういう事を思う。けど、この2人が一緒に過ごした時間を糧にして、しんどくても生きていけるはず、、って、セットで思うんだよね。私の願いみたいなものなんだけど。

怪物っていうタイトルだから、観客は自然と怪物が誰なのかを探しちゃう。そうだよね。
けど、この人が怪物!っていう事ではないんだよね。誰に中にも怪物は存在するわけで。

最後に大体思うのは、
普通の人なんていなくて、何か事件というか物事が動いた時って、全部表面に見えてる物だけじゃ全然足りないんだよね。
どんな小さなことも、全部を知ろうとすると大抵は複雑。色んなものが縺れて絡み合ってる。私たちの日常も。一概に誰が悪いなんて言えない。自分が絶対正しいなんて自信が持てない。

そういう事を思って終わる。

あと、演出について。
まず是枝監督作品はいつもそうだけど、今回も美術が完璧だった。
仏壇にお米が置いてあって、何というか、そこまできっちり丸じゃなくて、安藤サクラが盛ってるなぁって感じとか。
安藤サクラの服装、職場、全部がバチッと決まってる。疑いとか違和感がない。

あと、瑛太と安藤サクラが電車の窓の土を指で一生懸命にするシーン。下から撮ってるの演出に感服だった。お見事だよね。

役者陣が全員素晴らしいのは言うまでもなく。是枝ワールドだったね。
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