ハル

怪物のハルのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

「限られた人にしか手に入れられないものは幸せとは言わない」


すごく美しい物語に見えた。私の頭がお花畑だからだろうか。

冒頭、拉致のあかない病んだ職員室にイライラしながら、「いかにしていじめとそれに対処にしない学校の証拠を取り、弁護士に相談し、しかるべき機関に報告するか」ということを考えていたので、後半の展開には恐れ入った。
好き。こういう構成(ちょっと作為的に振り回されているような気にもなったけど)。

大人が理解できない、忘れてしまっているだけで子供の世界がどんなに多様で豊かで鮮やかなことか。
子供がその全てを言語化できて親に伝えることができれば、うまく解決できるものだと、思っていた。親子のコミュニケーションさえ取れていれば、と。
それは傲慢なのかもしれないね。
私たちは冷静に話しているつもりでいて、その実相手が自分と同じくらい豊かな世界を持っていることを、想像し尽くせないらしい。

じゃあどうすればよかったか、という話にはつながらない。各々がそれぞれの美しい怪物を発揮させて行動し、ぐっちゃぐちゃになったけど、結果なんかいい感じになった。その「なんかいい感じ」は映画として感動するにはいいけど、深く考えることは阻まれる気がする。


・自分の孫を過失致死したら拘置所に入るのか。お墓を別にする話結局何だったのかしら
・結局誰が怪物だったのか、誰が1番悪かったのか決めたくなっちゃう私もいる。決めることで安心したいのね、きっと。保身に走って問題を悪化させた教頭?アル中っぽいよりくんのお父さん?...でもこうまで視点を2転3転させられていては、誰かを断罪することなんてもうできない。きっとその人にはその人の事情があったのよ、と。
......でも。測り切れないけれど。そこで問題を自分から切り離して思考停止してしまうのは望ましくないことのような気がする。

やっぱり私は、「もしかしたら堀先生は屋上から飛んでいたかもしれなくて、よりくんはお風呂で衰弱死してたかもしれなくて、みなととよりくんが土砂崩れに埋まっていたかもしれない世界」を、結果それで良かったね、と受け止めるしかないのかなあ。「僕は可哀想じゃない」というのが2つとも本心だったのがとにかく救いね。どんな結末だったとしても。

とある私「大人たちが社会的な自分をめちゃめちゃに破壊して自滅していく中、傷つきながらも自分の青春を刻み込んだ子どもたち、やったな🙌」


・「それっぽさ」がちょっと苦手。
(川村元気さんと相性が悪い説)

あと安藤サクラに感情移入して先生に苛立つようにミスリードしておきながら、突然手のひら返してこちら側が「思い込みで一面的に判断した」自覚を"持たされる"のむかつく...天邪鬼が故か、監督は、脚本家は、この世界でどの立場に立ってるの?とか考えちゃう。


うだうだ考えてたけど、やっぱ「みんな思ってること全部喋れば良かったんじゃーん」というコミュニケーション至上主義的結論にも行き着く。
「お母さんはあなたが学校でいじめられてるんじゃないかって心配してるよ」とか「教頭に口止めされてて直接話せなかったんですけどやっぱり殴ってはいないんです」とか。
そこで口をつぐませるのは何なんだろうね。本来善である自分自身を「怪物」だと見て隠してしまうのはやっぱり自分自身(というか理性?)なんじゃないかな。

・終始学校という組織の異常性が際立つ。病みすぎてる。いくら人格者であってもやっぱり校長の親と堀先生への対応はダメすぎるし、ふつうにいじめもあるし、それに先生は気づいてないし子供たちもそれが当たり前になってしまっているし。ダメなのに状況を解消するほど教員に余裕がない。こわい。

・線路行けるようになってたし、あの世説はあるけど、それはやめてほしいな。美化しすぎ。

・「大人には計り知れない子供の世界の豊かさ」を思い知りつつ、でもその描写は大人によって作り上げられている、という矛盾。


.....まとまらないので一旦これで。
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