ぴよまろ

怪物のぴよまろのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.6
是枝裕和監督、坂元裕二脚本作品。
一人息子を懸命に育てるシングルマザー、生徒思いだが変わった趣味を持つ教師、一見無邪気に見えるが人に言えない悩みを抱えた小学生による、視点が変わりながら展開する物語。

是枝監督、坂元脚本、さらには坂本龍一音楽の遺作という、非常に話題性が高い作品。それぞれの作風がとてもよくミックスされ、収束していく物語が素晴らしかったです。

話題性が先行しがちですが、決してそのハードルを裏切らない、とても優れた作品でした。二転三転する構成で徐々に話の真相を語りつつ、視点によって怪物がそれぞれであるというメッセージが痛烈に伝わりました。同じ出来事を各登場人物の視点で語りながら、期待と裏切りをさせることができるのはさすがです。

大人たちの演技力と見せ方は言うまでもないですが、本作で特筆すべきは子役二人の演技力だと思います。それぞれの想いを持ちながら、子どもだから解決できないもどかしさと、子どもでも感じている闇とを最高の形で表現されていました。ラストシーンの受け取り方は様々と思いますが、どの受け取り方でも本作で最も美しいシーンであることは間違いないと思います。

視点で印象が変わる物語なので、複数観ることで深く楽しむことのできる、多層的な作品でした。
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