めがねちゃん

怪物のめがねちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

一部の人しか手に入れられないものは幸福とは言わず、みんなが手に入れられるものを幸福と呼ぶ。うろ覚えだけども、校長先生のセリフが印象に残っている。同じことを「怪物」にも言えるのだろう。自分のなかに、怪物や不幸、苦しみなどを、誰でも不意に手にしてしまうことがある。でも誰もが怪物になれるのと同じように、誰でも幸福になれるし、なりたいと願う。諏訪湖の映像と共に鳴り響く、故郷を思い出す像の鳴き声のような金管の音は、そうした願いを代弁していた。

他人を怪物だと思うように、人は自らを怪物であると思い込むことがある。そのとき、幸福への願いは不可能な希望のように思えてしまう。最後に湊が「生まれ変わりなんてない」と断言するのを、そのままの自分で幸福を願う決意として理解した。

物理的な出来事の連続はみんなで共有している。問われているのは、その中で他人にも自分にもどのような意味を見出すのかということであった。皆、変わることはできないのだけれど、その変化できなさのなかに何を見出そうとしてもよい。それぞれがどうにもならない事情を抱えていても、人が幸福を願うとき、それを止めることはできないのだろう。
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