あぶりかんぱち

怪物のあぶりかんぱちのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

見始めた時は「あぁ…小学校をとり巻く、終わった時暗ーい気持ちになる映画なのか…」と思ってたけどとんでもない。これぞ純愛映画!という快作でした。

でもタイトルは『怪物』。
で、なんでそのタイトルなんだろうと考えてみて。

映画で切り取られた一連の流れの中で、誰が正しいとか、誰が間違ってるとかではなくて、「誰もが他人からの捉えられ方次第で"怪物"になり得る」という怖さを含んでるんだなぁ、そこから来てるのかな、というのが個人的な着地点です。

息子を思うあまり「モンペ」と揶揄される母親、良い担任であろうとしているのに見た目で怖がられる先生、身内の楽しさを求めすぎてエスカレートするいじめ、同性愛を矯正しようとする父親、父の健康を思って放火する少年、そして想いの裏返しで暴力を振るう少年。1番怖かったのは愛校心が募って悟りの境地に入った校長先生かな…

でもきっとこんなの一面でしかなくて、その根底にはきっと自分なりの正義や想いがある。でも人は目の前の出来事でしかその人を判断できなくて、複雑に絡み合った末に生まれた行動ほど世間は『まとも』と捉えてくれない。つくづく人間社会って難しいなぁと思います。

で、こんな嫌気が差すような現実への救済ともいえるのが物語の後半を使って描かれる少年2人の話。
お互いのことが大切だけど、学校では違う態度を取ることへのジレンマ、学校を離れて秘密基地で本当に楽しそうに遊ぶ2人、芽生えた感情を一度否定しながらも自分の気持ちに向き合う姿…子役、進化しすぎでは?
この演技力なしに映画後のこの素晴らしい余韻は無いと思うし、重ねて坂本龍一の「Aqua」が流れてくるラストが『表向きハッピーエンドだけど、実際は…』という物哀しさを内在してるのが本当に凄いと思います。

あのラストも校長先生の言う『誰かにしか得られない幸せ』で、『誰でも得られる幸せ』ではないというのが辛いところ。深く考えさせられる、印象的なラストでした。
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