NaoMaru

怪物のNaoMaruのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.9
是枝裕和 監督
坂元裕二 脚本

母親、教師、子供(生徒)による3つの各視点で、時空間を行きつ戻りつしながら、“いじめ”という同じ現実(事件)を構成し描いてゆく。どの現実もその時点では納得がゆくものの、あとで描かれる現実がより真実に近いとわかる。学校職員が“世間の目”を気にしながら混乱してゆく様は、真実を遠ざけて組織優先のあまり起きた喜劇的風景に見えた。


【以下、ネタバレ注意】
今回も是枝監督は子役(役名麦野くん、星川くん)の演技を自然な形で、生き生きとえがく。秘密基地の廃電車は2人だけの自由な世界があり、誰にも汚されたくない秘匿の場として存在した。田中裕子演じる校長先生は生徒の一人・麦野くんに、誰にも言えない思いはトロンボーンに口をつけて「フゥゥっと吹けばいいんだよ!」というシーンにはこころが締めつけられた。

今から思えば、少年時代は純粋な危うさをかかえ、ときに怖ろしく理解不能に映っていたのではないか。そのときの想念は“タイムカプセル”に埋めて忘却されたはずなのに、本作で掘り起こされ困惑状態におちいった。隠された真実はそっとしておくべきか、衆目の集まる場で理解されるべきかーー。ラストは現実としてのハッピーエンドではなく、悲劇を超えてゆくファンタジーに思えた。


◇あとがき
「怪物だーれだ?」の答えは気になるところです。物語の途中では登場人物の多くが怪物に見えました(笑)。敢えて一人挙げるとしたら、中村獅童演じる星川くんの父親が怪物の発生源と思おちょります。
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