くまくま

怪物のくまくまのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.5
ジリジリと心を削っていくサウナみたいな話の展開と、湧き立つ感情を中和するような清涼感溢れる水風呂みたいな音楽と、人間の内側にある醜さを置き去りにして幻想的な儚さを写しだす外気浴中に感じるホワホワ感を濃縮したような映像の三位一体で攻め立ててくる邦画の中でも歴史に残る一本だと思った。以下、感じた事をざっと

・廃列車の天窓に降り注ぐ雨と拭えない泥は自分の中でかなり印象に残ったカットであった。天窓に降り注ぐ雨は宇宙のように神秘的な輝きになっていてここだけしばらく観てたいと思った。そして内側は押入れの中にいるみたいな安心感が漂っており、いったいどうしたらこんなカット思いつくのだろうか…

・男の「大丈夫」と女の「また今度」は信じてはいけないというのが一つの答えであり、すごい坂元裕二っぽい台詞でニヤついてしまった。(これ出てくるのがチャプター2でチャプター1はそんな坂元裕二感ないんだよね!チャプター2から感じ始めた)作中でも男性像と女性像を強調したセリフがいくらか使われており、常にポジティブとネガティブな意味が混在していると思った。これはそれらのワードに対して自分がすこし敏感になっているからなのか🤔

・バックグラウンドの小学生たちがめっちゃ小学生で微笑ましい。全力で机を消し続けるメガネの子、消防車を追いかける自転車に乗る男の子×2とそれを走って追いかける男の子×1という黄金比。紅白帽を中間にして被るウルトラマン男子はもはや令和にも存在しているのか?と懐かしい気持ちになる。

・タイトルの「怪物」は作中に出てくる様々なものへ当てはめられるワードである。ちなみに「怪物」「モンスター」の語源を辿ると前兆や警告、正体はわからないけど存在を感じるものと出てくる。全体的に薄らと湧き出てくる不穏な空気感は現代における問題点に対する警告的なものだと感じた。ちなみに建築的な部分も皮肉が効いてて(吹き抜けの風通しが良い学校内の人間関係がはちゃめちゃとか…)結構好き。
個人的な解釈として2人の少年が内側に宿した正体不明の気持ち、恋とも友情とも受け取れるザラっとした感情を怪物と表してるならめっちゃ素敵やん?と思った次第です。
くまくま

くまくま