茉莉

怪物の茉莉のレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.9
重厚感のあるストーリーである以上に、善悪をひとつに決めない・決めることができない人間社会そのものを描いているような気がした。
放火事件から描かれ始まるミナトの学校生活、教育現場でのドロドロした教員同士のやり取り、いじめ、児童虐待、同性愛の芽生え、豪雨のなかのファンタジー。
この映画の中で多用されるシャツのシワを伸ばすアイロンと学校の床の汚れをこそぎ取るヘラ。
捻じ曲げられたりしわくちゃになった事実を伸ばしたり、本当のことを傷つけてまで金属のような鋭利なもので傷つけてまでこそぎ取ったりすること、それはこの映画みたいな大きな事件に限らず、日常的に行われていること。

そして、事柄の明確な動機や行動原理がわからないからこそ、リアルに感じるシーンも多くカンヌ好みの作品だという印象。

相変わらず安藤サクラと是枝監督の相性がよい。子役たちもなんとも言えない味を出している。そして何より、田中裕子の死んだ目がたまらなく作品にマッチしている。最高のキャスティング。
茉莉

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