くれあ

怪物のくれあのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

私が映画に求めるものは、明日を生きるための活力だ。話や人物に感動したり、教訓を得たり、美しい画に癒されたりしたい。
残念ながら、この映画から得たのは「可哀想」という感情がほとんどだった。
星川君は父親がクズな上に、生まれつきの障害が多少ありそうで、同情を禁じ得ない。だが祖母に引き取られたり転校したり、環境が変わって救われる可能性があったのだから、絶望するには早すぎる。
麦野君は、うーん。小学生はまだ性差が小さく、友情と愛情の境目も曖昧だ。たまたま今、大好きになれる男子に出逢っただけで、いつか大好きになれる女子にも出逢うかもしれない。ジェンダーに悩むのは、もっと年齢を重ねて、沢山の人と出会って、体と心が成長してからでいい。
総じて彼らの絶望はあまりに未熟で、可哀想としか思えなかった。
彼らに振り回され、取り返しのつかない傷を負った麦野母と保利先生も哀れだ。たしかに彼らは子ども達の問題に気づけず、大人として十分な振る舞いをできなかったかもしれないが、、こんな仕打を受けるほどの悪人ではない。
子どもたちの絶望に焦点を当てるなら、せめて年齢を中3くらいにしてほしかった。星川君は完全孤立無援に生きていて当然転校等の予定もなし、麦野君はクラスの女子に告白されて付き合ってキスやそれ以上もしてみたけど違和感が強すぎて無理だった、くらいのエピソードもほしい。
そうすれば彼らの絶望に納得して共感したり、「実際このように苦しんでいる人が周りにいたらどうしよう」と思いやりの心を育んだりできたかもしれない。
もしくはラストで大人たちの救助が間に合い、上述したような正論を子どもたちに伝え、みんなで人生に立ち向かうような、フィクションらしい希望を見たかった。
本作は、ただただ可哀想な映画に感じた。

あと気になったのは、時間経過の描写だ。前半の大人視点では、麦野君が挙動不審~いじめ?発覚~先生の謝罪会見まで、せいぜい一ヶ月くらいに思えた。しかし後半の子ども視点による答え合わせだと、春~真夏?の数ヶ月間らしい。もっと分かりやすいと嬉しかった。

以上、私の感性には合わない映画だったが、画は綺麗だし、俳優陣の演技も上手かったと思う。特に麦野君役の少年は将来が楽しみ。
くれあ

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