脳みそ映画記録

怪物の脳みそ映画記録のレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.5
監督が是枝裕和で、脚本が坂元裕二で、音楽が坂本龍一!

中でも坂本龍一の音楽を劇場で聴けるのが多分最後の作品なので迷わずチケットを購入しました。
ご病気のため全スコアは引き受けられなかったものの、書きおろし2曲とアルバムからの提供。
これ、映画館で聴けて本当に良かった!




ある事件をめぐって複数の視点で描かれる群像劇です。

"怪物だーれだ"

 各視点によって誰が怪物にみえるかが変わって、先入観と思い込みの加害性を感じました。

 みえるところなんて限られているのでそこでの判断は事実と異なることなんて往々にして有り得えますよね。
誰でも怪物になり得るし、怪物に見え得る。

 子どもの世界、大人の世界、できるだけ多面的に考えても死角はいくらでもあるわけで、どうしょうもないし、怪物はいなくならない。付き合っていくしかない。



 また、明言はしていないもののクィア映画でもあります。怪物を生み出した理由のひとつがこれです。
 最近、クィアもの本当に多いですよね。同時期に公開している『CLOSE』もそうです。





ネタバレ注意













ラストシーン
廃電車の窓の泥がぜんぜん取れないのを車両側から映したカット。
光が差し込んではまた暗くなる。これ凄い良かったです。

 秘密基地の廃電車は宇宙の装飾が施され、男の子が二人ということもあり、『銀河鉄道の夜』を連想させます。さらには水難もそうですね。カムパネルラは溺死ですもの。
 ラストシーンをどうみるかは、考察次第ですが、『銀河鉄道』ということはそういうことなんじゃないかと思います。 
 今回はふたりとも鉄道に乗車し続けて、現実では行けなかった柵の向こうの線路に全てから解放されたように走っていきます。
 ハッピーエンドではないけれど、爽やかな雰囲気でバットエンドでないようにも感じました。