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怪物のmamipiguのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

ずっと緊迫していたし、終わった後もなんとも言えない気持ちで、なんだかいっぱいいっぱいになった。

最初の母親のターンでは、学校側からの心のない対応に幻滅したしイライラしたし、あまりにも伝わることのない感じが恐ろしかった。
なんでこんなことになるのか?と。
子供のことが心配だし、確実に子供からのSOSが出ているとも思った。
ずっと危うく見えている息子のことが心配だった。

担任のターンでは、一度レッテルを貼られた人間への恐ろしいまでの周りの変化に恐怖を覚えた。
自分はやってないと言えば言うほどに、生徒への関心を持てばもつほどに周りに疎まれ疑われる恐ろしさ。
声が届かない。歯車が完全に噛み合わない。
だれも信じてくれない。
動けば動くほどに泥沼にはまっていく。

こどもターンでは、こどもの世界があることをまざまざと見せつけられて、大人側からしか見えてなかった世界にこりかたまり、そんな当たり前のことを忘れていた自分のことを恐ろしくなった。
それと同時にとても美しいなと涙が出た。
だけどやっぱり、こどもの世界って時にものすごく残酷だ。
逃げ場がないし、今ある世界が全てだと思ってしまうから。
そしてあの教室でのクラスメイトの雰囲気も、自分がこどもの頃からあるものと何ら変わってなくて、知りすぎている光景だった。

それぞれの目線から見えている世界と、自分が主体になった時、全然違うことが怖かった。
一つの『これって?』という疑問から確信に変わるほんの少しの勘みたいな、ひっかかりみたいなものを信じて手繰り寄せたものが、『それ』じゃなかった時。
これって想像だけでどうにかなるものでもない。

1番の怪物は誰なんだろう?何なんだろう?
そう考えた時、それはやっぱり責任なく軽口で人のことを言う【感覚】なんじゃないかな?と思った。
『ガールズバーに行っていた。』『本当は校長が轢いた。』
その言葉は簡単に人の人生を奪う可能性があるってこと、そのくらい自分にとってはなんてことないゴシップでも、その人にとっては取り返しがつかないレッテルを貼られてしまうこと。
怪物はいたるところにいるし、きっと最初はとても小さいところからやってくる。
いろんな角度、いろんな想い、いろんな環境、そういうものを全て総動員して人と関わらないとなと思った。
人は自分とは違う。いつでも怪物はやってくる。

坂本龍一さんのピアノが美しく哀しかった。
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