映画館で邦画を観たのは久しぶりだ。音響が良いので入り込める。本作は特に坂本龍一の音楽が心地よい。
しかし、観終わった後の一抹の寂しさはなんだろう。後味が悪いというのとは違う。そこはかとない寂しさが胸に迫るのだ。
「怪物」とは誰のことだ？モンスターペアレントのこと？モンスターティーチャーのこと？様々なことを思いながら観ていた。怪物とは人の心を失った者を指すのか。
時間軸が行きつ戻りつするのは個人的にはあまり好きでないが、複数の人間をそれぞれ描写するには仕方がない。真実は各々にしかないことを描いた本作は現代版の『羅生門』でもある。
登場人物は皆、心に傷を抱えている。失った者の欠落を埋められずにいる。そうか、全員が怪物なのか。人の心を失った者が怪物だ。怪物とは欠落の異名であった。
監督：是枝裕和
主演：安藤サクラ
