酸基

怪物の酸基のネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

前半で蒔いた布石を後半で回収していく映画だが、後半は風合いが異なる。それは、少年が自分と同じ少年を「好き」(ライクではなくラブ)になった事実にどう向き合うかという話だ。大人たちは犯人探しに夢中になり、主人公の心に渦巻く苦しみには気付かず、母親の「当たり前の家庭」という言葉が彼には暴力になる。同性愛者を取り巻く世界の残酷さは、そのような日常の言葉や状況に存在する。この役を少年2人に依頼したのは非常に難しい決断だと思えるし、彼らはその役をナイーブに瑞々しく演じていたと思う。その点は素晴らしいが、個人的には前半パートのテンションと後半のテーマ性への演出はいささか乖離しているように思える。また、良いカットもあるが、総体的な印象は希薄に感じた。何にせよ、誰かが誰かを愛するという行為、その障壁を考えるキッカケとなり、それで議論が起こるなら、ある種十分だと思うが。
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