雷かあさん

怪物の雷かあさんのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.5
やっと観た。

シングルマザーの早織が学校に乗り込んで行った時の学校側の対応を見て「ちょっと極端に描いているけど、こういうことってあるよな。虚しいよね」と、早織の心情に思いを寄せる。少し戻って、湊が教室で暴れてクラスメートの持ち物を投げているところを見て「そうだったのか。保利先生、そんなに悪い人じゃなかったんだね。湊君、ちょっと不安定なところあるのかな」と思う。先生たちから見れば、保護者は「揉めたら穏便にお帰りいただくもの」というのも仕方ないのか、とか。
だけどまたしばらくあとで、その前まで戻って、依里に対するいじめを止められない、しかし加担したくもない湊のモヤモヤがそこへ繋がってるのを見て納得。いじめに遭っている依里の仮面的な強さが気になっていたけど、父との関係のシーンを見て「なるほど、納得」と安心する。
あちらからこちらからそれぞれの立っている場所から見れば、それぞれの言葉や行動に納得も理解もできる。でも私たちは時計を戻すことはできないし、同時に「あちらからこちらから」見ることはできない。
つまり。
私たちは、何もわかっていないということだ。
なのに、「なるほどわかった」と思ってしまう「思い込み」が怪物なのだ。時にはそれは善意の思い込みかもしれないけど、怪物になる可能性は同じことだ。
大人たちがさまざまに思い込んでいることをよそに、子ども二人は夢のような幸福な時間を過ごす。ワクワクドキドキザワザワヤッホー。それは間違いなく長くは続かない。けど、間違いなく、二人の心の中の大切な宝物なのだ。
だけどだけど、親の立場から言えば「どんだけ心配させるんじゃ!」
雷かあさん

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