レイモンド

怪物のレイモンドのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

小学5年生の教室で行われていたいじめに端を発する出来事を親目線、教師目線、子ども目線で追った作品。
親、教師は事態を正確に把握できておらず、子ども目線のストーリーを見ることでおおよそ何が行われていたのかが視聴者にも分かる。
作中では複数の人物が「怪物」という言葉を使う。怪物とは言い換えで安息を脅かしてくるものを誰しもが抱えていた。安藤サクラにとっては学校が。学校側にとっては安藤サクラが。瑛太にとっては学校も親もいじめっ子も。いじめっ子たちにとってはクラスで浮いてる異分子の苛められっ子がそう。苛められっ子の親にとっては学習障害のある息子が。安藤サクラ息子にとっては自身のマイノリティ性が。
でも、ほんとに怪物なんていたのかな。脅かされるかもしれないという不安感が安直な敵対感情をそそり、極端な行動に走らせる。それが悪意なく口伝で広がっていき大きな炎上騒動へと拡大していく。終わってみれば実体のある怪物なんて1人もいなかったじゃないか。だれかの明確な悪意が介在せずとも事態はここまで深刻な表情を見せるのか…。なんて感想も浮かんでくるのだが!

第一回、第二回の保護者と教師の面談がなんでやねん過ぎるやろ〜〜!!怪物はこいつじゃ〜〜!!
このタイミングの学校側の対応があんまりにも悪くて「えぇー」となったし、安藤サクラは学校への不信感が急速に高まって協力して事態を把握するというより子どもを守るための喧嘩というバイブスになってしまった。分水嶺過ぎて全然さり気なくない。もちろん、安藤サクラ側に対しても、学校以外にママ友に相談したりして教室で何が起こってるか把握する材料を増やしたりしないのかな、とかも思うけど、とはいえファーストアクションで学校に相談して「息子がこんなこと言ってるんですけど実際のところどうなんでしょう?」は全然変じゃないと思う。
問題は学校側の対応だよ〜。おかしすぎるよ〜。瑛太編では「いやーモンスターペアレントってあるからね実際モンスターだよ」みたいな謎の断定で教師たちが安藤サクラをブチギレさせるために綿密に用意したのかなと疑いたくなるぐらい酷かった面談が仕上がっていった的な描写があるけど、なんなのその断定!?
子どもは5年生だし教師の中には安藤サクラと関わりのある人間も複数いるだろうし、安藤サクラが対話の成り立たない激ヤバ人間では無さそうだなというのは感じてる人もいるでしょ。仮に学校側の激ヤバ人間が「この対応で行きましょう!」って草案を出してきても、(いや〜これやばくねーかー…)って思って突っ込むやついろよ!?組織やん!
知らないけど公立小学校ってそんなビッグモーター的な場所なの?!上の1人が独断で対応を決めて下は自分の進退がかかってるから何ごとも反論の余地がない的な!?少なくとも作品で描かれてる限りでは学校の雰囲気は悪そうじゃなくて、その雰囲気とあそこの局所的な対応の悪さがアンバランス過ぎて違和感が凄いんだよ。

だから、何が悪かったんでしょーなー的な感想よりも、いやここ!ここ悪すぎるって!となってしまう。
あの辺りの違和感から監督に仕組まれた展開(そりゃそうなんだけど)じゃん!って気持ちに少しなった。
なんなら子どもたちの遊び方にも監督がいた感じしたよ。
廃線になった車両を秘密基地にして創意工夫でいかにも子供らしい手作りのデザインで飾り立てて、知恵とクリエイティビティを発露させて遊んでた。
「この映画を見てる層が子供に対して期待してる無邪気な子どものあり方〜!!」と叫びたくなった。

といくつか気になる点があったものの、楽しんで見れたことには変わりないッス。面白い映画だったッス。