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釣鐘草のENDOのレビュー・感想・評価

釣鐘草(1940年製作の映画)
4.0
ロケーションと演出が絡み合う。彼岸と此岸。ここぞとばかりに心に寄り添うズームの連続。子供たちのケンカ中に投げられる玩具は画面外から。そもそも一家離散となった原因の父親は写真ですら一度も画面に登場しない。『花つみ日記』のメンバーと師範学校で再会。清水美佐子が脇役ながらデコちゃんを支える。渡場を経由して河岸で待つ弟。舟を自ら牽引するデコちゃんの運動と固定されたカメラと動かない木馬。彼岸と此岸、あっという間の死。写真が導く実像の沢村貞子。三世代間の気持ちが通じ合った時は既に何もかもが手遅れ。北沢彪の優しさが通底する。デコちゃんのクローズアップ、墓場での歌唱、いずれにしろアイドル!

➖併映➖
『姉の出征』
【スタッフ&キャスト】製作:竹井諒 原作:真壁博 脚本:真壁博 監督:近藤勝彦 撮影:川崎喜久三 音楽:鈴木静一 出演:小杉義男/英百合子/山根寿子/高峰秀子/進藤英太郎/神田千鶴子

完全なプロパガンダ映画だが、小豆島のロケーションが素晴らしい。キアロスタミ監督の『風が吹くまま』などの映画よろしく、ジグザグ道を俯瞰するカメラ。しっかり風が吹いてる。そして人物たちの集団的な静止と流動。とにかくドリーの連続。そしてスタンダードサイズを活かした奥行き。カメラはデコちゃんの実家である蔵屋敷を動き続ける。止まったら死んでしまうかの如く。幼いながら出征中の姉に代わり、家を支えるために自分の青春を捧げるであろう未来に途方に暮れる。
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