てっぺい

ミステリと言う勿れのてっぺいのレビュー・感想・評価

ミステリと言う勿れ(2023年製作の映画)
4.0
【勿れ映画】
ミステリと言う勿れ、出演陣の演技力や、グサグサ刺さるメッセージに胸が熱くなる。ただのミステリと言う勿れ、2段階の謎解きと緻密な伏線回収で1ミリも見飽きない。

◆トリビア
〇「僕は常々思っているんですが…」に続けて説かれる整の〝常々論〟。菅田将暉は好きな常々論を聞かれ、ドラマ第1話の「子どもだったことはあるんで、子どもの気持ちは分かります」と、本作での「子どもの心は渇く前のセメントのようなもの」をあげた。実世界でも、本当にそうだなと思うという。(https://mrs.living.jp/hiroshima/a_topics/topics/5302807)
○菅田将暉は、整の好きな所を聞かれ次のように回答。1人の時間が楽しそうで、ウキウキと家でカレーを作っているのは演じていても楽しい。知識豊富だけど、間違った時すぐに「すみません、間違っていました」と認められるところ。あとはあの髪型がやりたくて演じた部分もある笑。(https://mrs.living.jp/hiroshima/a_topics/topics/5304164)
〇菅田将暉は「人は弱くて壊れやすい。それが当たり前」のような整のセリフを言いながら悲しさを感じている。「そう言わなきゃいけないということは、そうはなっていない世の中なわけですよね。」(https://eiga.com/news/20230909/11/)
〇菅田将暉にとって、出演する連続ドラマの映画化は初。(https://eiga.com/news/20230909/11/)
〇汐路を演じた原菜乃華はもともと原作のファンで、役作りのために、初めて30cm髪の毛をカット。汐路が、自分でも自分の感情がよくわかっていないキャラクターだったことから、迷いながら演じているときがあり、初めて現場で涙してしまうほど、過去最も難しい役だったと明かす。狩集家が全員集合したシーンは、真冬の大吹雪の中、撮影場所には暖房がなく、カイロを20枚ほど貼って挑んだという。(https://www.excite.co.jp/news/article/RikunabiShingakuJournal_20230907000008/)
漫画でも描かれていた汐路のぴょこぴょことした本作での歩き方は、監督の演出ではなく、原自身による表現。(https://www.fujitv-view.jp/article/post-970583/3/)
〇菅田将暉と萩原利久は過去共演したドラマ「3年A組 -今から皆さんは、人質です-」では教師(菅田)と生徒(萩原)役だったが、本作では菅田が年下役。不思議な感覚だったと萩原は語る。(https://news.merumo.ne.jp/article/genre/12922890)
○ 整に対して新音が口にする「このブロッコリーが!?」はアドリブで、原作の別のシーンから萩原利久自らがチョイスしたセリフ。(https://not-mystery-movie.jp)
広島弁の役柄のため、萩原はアドリブも方言指導の担当に事前相談していた。(https://news.merumo.ne.jp/article/genre/12922890)
〇萩原は、仕草や目線、セリフのニュアンスが変わるだけでそれが意味深に映って誤解を招き、観客を混乱させてしまうことがないよう、撮影現場では他のキャストと「いまだかつてないほどのリハーサルを重ねた」という。(https://www.cinematoday.jp/news/N0138917)
○ 萩原は撮影時、ダチョウの魅力に陶酔。深夜の撮影時にダチョウのクイズを出題するほどハマって調べた結果、インタビューで答える現場のエピソードがダチョウのみになってしまった笑。(https://www.oricon.co.jp/news/2293102/full/)
○ 狩集理紀之助の眼鏡が光るシーンが菅田将暉と松下洸平のお気に入り。演じた町田啓太によると、太陽光のバランスをミリ単位で調整、何度もテイクを重ねたという。(https://amp.natalie.mu/eiga/news/541317)
○喫茶店のシーンでは、リハーサルの後、普段なら準備のため場を離れるキャストが離れず、菅田から「何か少しでも良くなるアイデアがあればと思って」と監督に進言。そこからさらに話し合いの時間を取るほど、熱のある現場だったと監督が明かした。(https://www.fujitv-view.jp/article/post-970583/2/)
○整と我路の話や、物語のキーとして出てきている星座もまだ揃っていない事から、監督としては続編を作りたいと思っている。(https://www.fujitv-view.jp/article/post-970583/3/)
○ 整が「犬神家の一族…」とつぶやく、先代当主の遺言書が公開される狩集家の広間シーン。そのロケ場所となっていたのはドラマ版の「犬神家の一族」も撮影された旧家。(https://not-mystery-movie.jp)
〇狩集家邸のロケ地は、岡山県倉敷市の旧野崎家住宅(国指定重要文化財)。(https://jiyuzine.com/trip/post_2534/)
喫茶店のシーンのロケ地は、東京都足立区にあるシルビア西新井店で、『下町ロケット』他多数の人気作が同店で撮影されている。(https://www.enjoytokyo.jp/article/201510/)
○109シネマズは本作とコラボし、カレーをこよなく愛する久能整にかけ、カレーポップコーン 
を発売。全国先着5000名に特製シールもプレゼントする。(https://x.com/not_mystery_/status/1700766056619315534)

◆概要
【原作】
田村由美による同名漫画(累計発行部数1800万部突破。『月刊フラワーズ』で現在も連載中。本作はその原作2~4巻で展開される通称“広島編”が原作)
【脚本】
「本能寺ホテル」相沢友子
【監督】
「信長協奏曲」松山博昭
【出演】
菅田将暉、原菜乃華、町田啓太、萩原利久、柴咲コウ、松下洸平、鈴木保奈美、滝藤賢一、でんでん、野間口徹、松坂慶子、松嶋菜々子、伊藤沙莉、尾上松也、筒井道隆、永山瑛太、角野卓造、段田安則、柴咲コウ
【主題歌】King Gnu 「硝子窓」
【公開】2023年9月15日
【上映時間】128分

◆ストーリー
天然パーマでおしゃべりな大学生・久能整は、広島で開催される美術展を訪れるため同地にやってくるが、そこで犬童我路の知人だという女子高生・狩集汐路と出会い、あるバイトを持ちかけられる。それは、狩集家の莫大な遺産相続に関するものだった。当主の孫にあたる汐路ら4人の相続候補者は、遺言書に記されたお題に従って謎を解いていく。やがて彼らは、時に死者さえ出るという狩集家の遺産相続に隠された衝撃の真実にたどり着く。


◆以下ネタバレ


◆演技力
まずはコレ。菅田将暉の、あの膨大なセリフ量を早口でまくしたて続けるのもよくよく考えればすごい事だし、本作では彼の潔癖ぶりがよりコミカルに表現されていて(屈辱ぶぶぶ…と湯船に沈むのは彼のアドリブか笑)、整の人間らしさがより際立っていたと思う。流石の菅田将暉。でもそれを食っていたのは原菜乃華。朝晴の逮捕に大粒の涙で泣き崩れる様、亡き父が残した石のブレスレットを受け取り一粒の涙で父との絆を表現する様、整の“乾く前のセメント”話に鼓舞されうるうる流した涙と、その涙の演じ分けが見事。自身はもう消したいそうだが、彼女のWikiに泣く演技が特技と記載されているのも伊達じゃない。

◆ミステリー
汐路達4人のいとこに迫る危機が、汐路自身が仕掛けた罠だった事、そして、一族が代々行ってきた犯行が明かされるまで、ある意味2段階のミステリーなのが本作の大きな特徴。4つの蔵の名前に足りない文字とは何なのか、三体の人形が足りない理由とは、整を襲った車は誰の仕業か、鬼の集いを通じて次第に真相に繋がっていく展開も見飽きない。もっと言えば、一族の罪が暴かれながら、朝晴の台詞とリアクションへの整の細かい違和感描写が続き、非常に緻密に張り巡らされた伏線回収がなされるのも何とも本作らしい。エンドロールで伊藤沙莉ら大隣警察のメンバーの名前が出てきた時もある意味ミステリーだったが笑、ミッドクレジットでちゃんと登場してホッとした笑。そんなミステリー満載の本編が、頭と終わりを我路で締めくくっている本作。整が我路の思惑の中で踊らされている表現でもあり、続編があれば整と我路の関係性を描いていきたいと語る、監督の思惑が見え隠れしていた。

◆ミステリと言う勿れ
そんな見どころ満載のミステリーが続く中、真に訴えてくるのは整の言葉たち。“女の幸せ”は男が作り出した言葉だというくだりは、女性の作者ならではの発想で今のご時世にズシリと響く。“子供の心は乾く前のセメント”も、ゆらの娘と汐路あてに2度出てきた言葉であり、特に本作のもう1人の主人公でもあった汐路を癒し鼓舞した重要なフレーズ。海外の刑事ドラマを例に取り、“人が弱くて壊れやすい事を認める社会”を説くくだりが、菅田将暉が言うたびに悲しくなるセリフだと語る意味も分かる。原作、ドラマシリーズ同様、本作がまさにただのミステリと言う勿れ、作者の(整の)、言葉を通じて一つ二つハッと気づかされる、人間の真理を突く作品である事がやはり1番の魅力。本作でもそれをいかんなく発揮していた。

◆関連作品
○「ミステリと言う勿れ」
テレビドラマシリーズ。全12話と特別編がFODで配信中。

◆評価(2023年9月15日現在)
Filmarks:★×3.8
Yahoo!検索:★×3.7
映画.com:★×4.0

引用元
https://eiga.com/movie/98387/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ミステリと言う勿れ
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