ぶみ

ミステリと言う勿れのぶみのレビュー・感想・評価

ミステリと言う勿れ(2023年製作の映画)
3.0
1600本目となるレビューはこちら。

この謎が、僕を放さない。

松山博昭監督、菅田将暉主演によるミステリで、同名タイトルのテレビドラマの劇場版。
主人公・久能整が、遺産相続にまつわる謎の真相に迫る姿を描く。
原作は未読であるものの、ミステリ好きの私がミステリと名のつくドラマを見ない理由はないと思い、放映当時にテレビドラマ版は鑑賞済み。
主人公となる大学生・久能を菅田、狩集家の遺産相続人で久能にアルバイトを持ちかける女子高生・狩集汐路を原菜乃華、他の相続人を町田啓太、萩原利久、柴咲コウ、汐路の両親を滝藤賢一、鈴木保奈美が演じているほか、松下洸平、野間口徹、松坂慶子、角野卓造、段田安則、でんでん、松嶋菜々子、石橋蓮司、ダンディ坂野、春風亭昇太等に加え、永山瑛太、筒井道隆、尾上松也、伊藤沙莉といった、レギュラーメンバーも引き続き登場。
物語は、原作では通称「広島編」と呼ばれる内容を映像化しており、久能が巻き込まれながらも、狩集家の遺産相続にまつわる謎を解き明かしていく様が描かれるのだが、ダッフルコートに天然パーマ、そして、「僕は常々思ってるんですが…」という枕詞に始まり、物事の核心を突いてくる台詞を語る久能は健在であり、キャラクターの魅力は抜群。
また、本作品のヒロインを演じた原については初見だったのだが、福本莉子と見間違えていたのは恥ずかしい限りであるとともに、その透明感あふれる演技は、今後に期待したいところで、なおかつ、彼女の幼少期を演じた川田秋妃が原にそっくりだったのはナイスキャスティング。
ただ、内容としては、あくまでもテレビドラマの延長線上のクオリティであり、二時間ドラマでも十分だったかなというのが正直な印象であったのと、私的には、本作品に先立って地上波で放映された特別編の後半のエピソードの方が、パズル的な謎解き要素が多く、好みだった次第。
また、予告編にもあるように、冒頭、クルマが崖から転落し、爆発炎上するシーンがあるのだが、通常、可燃物でも積んでいない限り、クルマが衝撃で爆発するようなことは、ほぼないため、作品としてのつかみはOKなのだが、いかにもテレビ的な演出であり、非常に残念なところ。
少し人気のあったテレビドラマが、続編や完結編を映画化するのは、もはや今のテレビ業界の常套手段ではあるものの、私的には、レギュラーシーズンをテレビドラマで見せておいて、続きが有料となる手法は、最初、無料配布の粗品で客を釣っておいて、最後には高い布団を売りつける怪しげな商法と同じように感じてしまい、否定的な立場。
確かに、それでも映画ならではの独自性を出していれば問題ないし、映画館に足を運ばせるという点では、商業的には美味しいのだろうが、果たして多くの観客が、映画を観に来ているのではなく、続編を見に(あえて見るを使います)来ているのだとしたら、映画界全体を考えると、決して好ましいものではないと感じるのは私だけだろうか。
どんどんその世界に引き込んでいく久能は相変わらず魅力的であり、ミステリとしても悪くないのだが、やはり、映画ならではのスケール感や、映像美、没入感等があるとはお世辞にも言えず、二時間ドラマで十分かなと思ってしまったため、既存の概念を打ち破ることがなかった一作。

弱くて当たり前だと、誰もが思えたらいい。
ぶみ

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