Nemuiman

すべての夜を思いだすのNemuimanのレビュー・感想・評価

すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)
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音の在り方が本当に素晴らしい。

通過していく時間とそこにある土地や記憶についての映画、というとそれなりに擦られたテーマだし演出的にも目新しいものは殆ど無いのだけど、それ故に丁寧に映画が作られることの大事さを思い知る。
劇中の時間を一日に絞る事で時間に対しての意識が集中する。
各人物を跨いでシーンバックが行われる際に後ろで鳴っているヘリコプターの音が繋がっていることや、動線が微妙に被っていることで関係の無いはずの人物同士のシーンがシームレスに繋がれていくことが、この映画内の時間が決して逆流しないことを示している。
それは、編集作業時に必然的に起こる、現実の時間を改竄していく作業というものを肯定する演出にも見えて、この映画が飽くまでもフィクションであることを提示している。
逆流しないはずの時間の中で、ビデオカメラの映像とダイくんの目線?のカットに入る瞬間のみスクリーンに過去が流入する。
特にビデオカメラ映像に関しては、虚飾性や演出性を限りなく排した映像であるが故に、あまりにも特権的立ち位置にある。

時間が一方通行である、というあまりにも現実に則した事象をフィクションとして作りあげたことが、過去の流入に特別な感動を呼び起こしている。

これらの演出を担保するフレーミングもとても良い。
フレームイン・アウトする運動体に過ぎゆく時間を重ね合わせてしまう。
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