ノラネコの呑んで観るシネマ

マイ・エレメントのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

マイ・エレメント(2023年製作の映画)
4.8
傑作。
水・火・土・風のエレメントが暮らすNY 風の大都会を舞台に、触れ合うことすら許されない火のエレメントのエンバーと水のウェイドの禁断のラブストーリー。
これは一件ポリコレに見えて、実は全くポリコレでは無い。
いや、正しいポリコレだな。
なぜなら本作の多様性には、全てバックグラウンドと物語上の意味があるからだ。
設定だけして放りっぱなしの作品とは違う。
韓国系のピーター・ソーン監督の、半自伝的なストーリー。
水は最も古い移民で、都市のインフラも基本水に合わせて作られている。
逆に火はアジア系っぽい風習を持つ新移民で、色々な差別や偏見を受けている。
「ウエストサイド物語」から「イン・ザ・ハイツ」まで様々な作品を連想させるが、私には「エブエブ」を娘目線で描いたバージョンに思えた。
銀河の破壊神にはなってないが、エンバーも親たちの価値観と、自分の中の新しい世界の価値観に引き裂かれて爆発寸前。
そこにいい意味で育ちがよく、ボンボンのウェイドが現れたことで、彼に導かれて少しづつ自分を解放して行く。
若干の駆け足感はあるが、二人の真実の愛に泣かされた。
ピクサーブランドの生きる道は、本作や「ソウルフル・ワールド」みたいな少し大人向け路線だと思う。
ところで、この映画で一番ダメダメなのは市役所なんだが、これも新移民の多い貧しい街のインフラは後回にされると言う、お役所仕事への皮肉なんだろうな、たぶん。
ブログ記事:
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