とても面白かった。
前々から強く感じていたことではあったけど社会問題を描くことが更に困難な時期に来てるのかな、と感じた。
「我々」や「彼ら」といった"巨大な主語"を用いて映画自体を一種の共通語として駆使して語ろうとしても、結局はパーソナルな体験と言葉がなければ観客の心には何も届かないし、なんとなく一時的に「正しさ」だけを見た気にさせて鑑賞者の中に何も残せずにすぐ忘れられるのが関の山だ。
皮肉だけれど、最近のディズニー作品にはその傾向が特に顕著で、テーマを高く掲げている割には表現・演出がテーマと噛み合ってないことが多く見受けられる。社会問題を化粧品のように上辺だけ塗りたくっただけの「それ本当にお前の本心なの?」とつっこむことにも飽きるほど嘘っぽい作品が跋扈して辟易していた。
しかしながら今作は大きなテーマを描きながらも、描かれたものが非常に個人的なところから発せられていることがよく伝わってくるものだった。
演出で言いたいことを伝えようとする誠実さと表現力が素晴らしくて、脚本や言葉よりも画にウェイトを置いて訴えかけようとする姿勢に痺れた。
ウェイドがエンバーを泣かすシーンは特に良かった。「投げかけた言葉が心にどう作用するか」がアニメーションでしかできない形で素晴らしく表現されていて、言葉を言葉以上の表現方法で魅せてくる力量が本当にすごい。
火と水から連想される様々なアイデアもそれらが生むスリルも見ていて心が踊った。