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マイ・エレメントのyoogeeのレビュー・感想・評価

マイ・エレメント(2023年製作の映画)
4.3
ソーン監督自身が「これは私にとってパーソナルな物語」と語っているように、すぐ「あ、これ韓国系移民の家族のストーリーなんだな」と分かる。ファイアタウン内の看板に書かれた文字も、なんとなくハングルの崩し文字に見えなくもない。エンバーの父親が炭焼きナッツ(辛い食べ物のメタファー)を元素の異なる娘の恋人に食べさせて、その反応を見定めるように「お前には無理だろう」と突き放す感じとか、互いへの敬意を示すクンジョル(お辞儀)をしあうシーンは、特に韓国系の人たちには「わかるわかる」とうなずけるのではないかな。韓国ではピクサー作品の歴代動員数を塗り替えたと聞いたし、親族に少なくともそういった、移民として他国へ渡った人の存在が身近にあるのだろうと思う。
ソーン監督は、移民たちがもたらす多様な文化の深みが、米国には確かに存在するというメッセージを訴えている。一方の日本は、移民の受け入れ人数を極端に制限したり、未だに単一民族だと信じている人々もいて、この作品の面白さが真に伝わっているのか分からない。移民1世は特に、自分たちがいろいろな苦労や差別を耐え抜いてきたからこそ、次世代にはいい生活をしてほしいと望む。ゆえに「なぜあえて茨の道(コミュニティーを出たり、異なる民族と結婚すること)を進むのか」とアレルギー反応が出るのだろうな。それもこれも子どもを守りたいという一心から出た言動だと分かっているのだけど。
エンバーの父親は、自分の夢はエンバーなのだと語った。子どもの幸せを望んでいるという、普遍的で見返りを求めない親の愛情に触れると、やっぱり泣いてしまう。良い映画でした。
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