RISA

マイ・エレメントのRISAのレビュー・感想・評価

マイ・エレメント(2023年製作の映画)
4.5
ー 夢と愛とボーダーラインを越えた物語。

火、水、土、風
といった様々なエレメントたちが暮らす
エレメントシティでの物語。

火のエレメントである主人公エンバーが
普段交わることのない水のエレメントの
ウェイドと出会うことで
物語が展開されていくんだけど、、
すごくよかったな〜。

というのも単なるラブストーリーや
夢物語ではなくて
火のエレメントたちが描く
”移民“の苦悩なんかもあったりして
今を未来を生き抜く、10代後半〜20代や
過酷な時代を生き抜いた親世代にも
グサグサとささる物語なのかなと。

そもそも物語のはじまりも、
主人公エンバーはまだ存在していなくて
エレメントシティで火のエレメントが
生活の基盤を作り町に根付いていく所から
描かれていたりするから、
火のエレメントの目線でエレメントシティ
の世界観に触れるような感覚で。

また今回、大きな存在となる
ウェイドをはじめとする水のエレメントたちも
実態のない”水“をアニメキャラクターとして
確立させるっていうのがものすごいなと、、
(もちろん”火“も実態がないから、
実態のないキャラクター同士を
主人公にさせるってすごい発想と力量だよね)

物語の展開としても、
すごく自然な流れで魅入ってしまって
あっという間の100分だったな〜。

というのも本作のストーリーは
韓国からアメリカへ移り住んだ過去を持つ
監督のバックグラウンドが色濃く反映
されているようで、、
(作中エンバーのおばあちゃんが発した
火のエレメントと結婚しなさい。
って言葉も監督の祖母が実際に彼に
韓国人と結婚しなさいと言ったみたい。)

加えて監督は成長するにつれて自分の
アイデンティティが分からなくなりつつも
(韓国人なのかアメリカ人なのか
自分は一体誰なのか。
問いかけ続けた時期もあったようで。)
イタリア系アメリカ人の女性との
結婚もされたそうで、
「皆がどんなに違っても、必ず共存できる。」
というメッセージをこの作品にも込めたそう。

最後の写真の演出も映画制作中に
監督の両親が他界してしまったことで
ご両親への感謝の気持ちを表したそうで、、

やっぱり今の時代、
個性の自由とかボーダーレスとか
すごく主張されるようになったけど
こうやって実際に移民としての経験をもつ
監督が自身の過去を交えながらも
アニメーションっていう
わかりやすく押し付けがましくなくて
すべての年代、国籍、性別に響くような
フィルターを通して
世界に“共存する”というメッセージを
発信することは素晴らしいなって。

やっぱり今の時代の個性って
本当にデリケートに思えてしまって
どう生かしたら良いのか
どうしたら傷つけずにできるのか
とか考えてしまうけど、
考え過ぎずに皆を尊重し合えれば
それで十分なのかなとも思えたりして。

だから共存って深いテーマのようだけど、
実はもっとラフに考えて、
きっと誰もが日常的に当たり前にできている
相手を尊重しながら生きていく
っていうことをこれからも
より多くの人の当たり前にして
生きていけばよいのかなってね。

アニメーションって、
子供よりも大人に対して深い気づきを
与えてくれる素敵なものだなって
改めて痛感してしまったな〜。
RISA

RISA