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マイ・エレメントのプレコップのレビュー・感想・評価

マイ・エレメント(2023年製作の映画)
4.8
最新型ピクサーはずっと継承されてきた魂と新鮮に感覚に訴えかける力に満ちている

移民の苦難を真っ直ぐに描くオープニングからかなりグッとくる。Disney+の特典映像「ピクサーへの道」を観ると、制作者のうち、多くが移民としてアメリカに渡ってきた経験を持っており、監督のピーター・ソーン自身もそういったバックボーンを持つからこそ、「多様性」という言葉に絵空事的な意味を持たせることなく、他者からの無意識の差別をリアルな経験を元にして描いているところが刺さる。今作では、それにプラスして無自覚の攻撃性を火炎として描いているのが素晴らしい。そこを受け入れた上で伝えられる、今作に通底するメッセージはより大きなカタルシスとしてストーリーに組み込まれている。

と、社会的メッセージだけでも奥行きが凄まじいのに、この映画はなによりギャグが個人的に全ハマりしたのがサイコーだった。セリフに多く含まれるダジャレや比喩表現は打率がめちゃくちゃ高く、言葉遊びが楽しすぎる。また、映像上の小ネタも裏笑いとかじゃなく表で爆笑できるシーンばかりだった。特に、ウェイドの「アイデアが浮かんでくる」シーンは水という特性を上手く使っていて白眉だった。

音楽も最高。主題歌を手がけたLauvもいいし、トーマス・ニューマンのサントラも良い!こういうシンセ×アンビエント的なサウンドが映像によくあっていた。主題歌「Steal the Snow」はピクサー主題歌の中でもベストに入るくらい好き。

2019年の「トイストーリー4」のオープニングでとんでもないレベルに達したピクサーによる水の表現は今作で現在の最高点を出していてパーフェクトといえる出来だし、火とともにそれをキャラクターに落とし込んだことは革命としか言いようがない。
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