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タイガーボーイのdm10foreverのレビュー・感想・評価

タイガーボーイ(2012年製作の映画)
3.7
【秘密】

先日、日頃から仲良くしていただいているchaooonさんに教えていただいた「イタリア映画際オンライン上映」。
初回こそ登録の細々はあるけど、そんなのはいつものことよってな感じでサクサクと。
いくつかの作品がある中で「短編」のみが無料なのね・・・(汗)
危うく長編をポチッとするとこじゃったわい(笑)

てな感じで画面を下にスクロールしていくと・・・ありました、お目当ての短編作品。
ということで早速鑑賞。

これ「子供」「イタリア」「プロレス」っていう、いかにも「ドタバタ」っぽいキーワードにつられてもっと明るい映画かな・・って思ってたんだけど、それにしてはジャケットの男の子の目が虚ろなのが気になるね・・・っていうのが第一印象。

――なぜかいつも虎のマスクを被る少年マッテオ。大好きなプロレスラーの「タイガー」に憧れているだけではなく、マッテオには誰にも言えない衝撃の秘密があった・・・(Filmarksあらすじより)

観てたな~
僕らが子供の頃って金曜日の夜8時っていう超ゴールデンタイムに「ワールドプロレスリング」っていう番組が毎週あったのよ。
今じゃ考えられないよね(笑)
金曜の夜8時にブッチャーが頭から血を流している映像が普通にお茶の間に流れていた、そんな時代。

でね、やっぱりいたんですよ。「マスクマン」
当時は、ご存知「タイガーマスク」の他にも「ブラックタイガー」「ストロングマシーン」とかね。
彼らが戦うときって不思議な高揚感があって、プロレスファンからすれば実はマスクの中が誰なのかもバレバレではあるのにも関わらず、みんな「謎の覆面ファイター」として応援していたんですよね。
だから、試合中にマスクを取られそうになったりすると、知っているくせに「あぁ~~!!」ってこっちまで大きな声を出してしまったり(笑)

・・・あれって、一種の「変身願望」なのかもしれないですよね。

文字通り「マスク」で隠すことによって≪自分じゃない≫って割り切ることが出来れば、逆に今までの自分にはない一面を表に出せるようになるのかもしれない。
それは、もしかしたら「自分の代わりに自分自身を叶える存在」となって。

マーベルやDCや東映なんかの数多のヒーローが世界を救ってきたけど、結構「変身スタイル」があるヒーローって多いよね。
(中には「ソー」や「キャプテンマーベル」みたいに最初からまんまヒーローみたいのもいるけど笑)
あれも「戦う自分」に変身することで「柵や弱さ」といった変身前の自分と切り離しているんですよね。
そうやって「もう一人の自分」になる事で、踏み出せる一歩がある。

考えてみたら、僕もサッカーやってた時は「試合用のユニフォーム」を着た瞬間に特にアドレナリンが体内で出まくってるのを感じていたし、臨時でキャプテンマークを腕に巻く機会があった時なんかは、なんか知らんけど凄いテンションで試合に挑んでいた気がする。
あれも「切り替え」という意味では一種の「変身」だったのかもしれない。

主人公のマッテオは、ずっと誰にもいえない「秘密」を一人で抱えていた。
本当は誰かに助けを請いたかったのかもしれない。だってまだ子供だもん。
でも、彼は強かったんだと思います。
お母さんが何を言っても最期までタイガーのマスクを外さなかったのは、もしかしたらマスクを外してしまった瞬間にマッテオに戻ってしまって、お母さんに泣きついてしまいそうだったから。
大好きなお母さんだからこそ心配はさせたくなかったし、そのためにはとにかく自分が強くなるしかないって思ったんじゃないかな。

あのマスクはその決意の表れ。
マッテオ本人では折れてしまうかもしれないけど、憧れの最強レスラー「タイガー」が自分に勇気と力を与えてくれている。だから、絶対に負けない。
解決方法が合ってる、間違っているが問題なのではなく、彼があの年で「孤高のヒーローに纏わりつく業」を知ってしまったようなビターな感覚も漂っていて、短編ながらも伝えたいことはしっかり描いていたんじゃないかな・・・って感じました。

エンディングで流れるロック調の曲も疾走感が合って、マッテオがあらゆる意味で「一歩を踏み出した」っていう感じがして好きでした。
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