キャサリン子

その夜の侍のキャサリン子のレビュー・感想・評価

その夜の侍(2012年製作の映画)
4.5
最後の最後まで緊張感が張りつめていて、観賞後の疲労感が半端ない…

妻を轢き逃げで殺された男が、犯人に復讐する話。
と思いきや、そんな単純なストーリーではなかった。
これは、復讐の物語、というより、恐らくは、ヒューマンドラマ。


『“平凡”てのは、全力で築き上げるものなんだよ』

この台詞が、この作品における全てなのかなと。

主人公が犯人に告げた『他愛ない話がしたい。平凡で、他愛ない話が』で、妻を失った男の孤独が痛いほど伝わってきた。
私の友人が旦那さんを病気で亡くして、しばらくぶりに会った時に「(死んだ旦那と)話がしたい」って寂しそうに言っていたのをふと思い出した。


ある日突然平凡を奪われた主人公、
平凡を守ろうとする周囲の人たち、
平凡を夢見る若者…

平凡は、簡単なようでいて、維持するのは容易くないのかも知れない。


轢き逃げで最愛の妻に先立たれた主人公は、まるで“生きているけど死んでいる”みたいで最初はなんだか不気味だったけど、デリヘル嬢とのラブホでのやり取りから、彼は犯人への憎悪や怨恨以上に寂寥感に苦しめられているのかもしれないと感じた。
あのシーンから、彼が哀れに思えてきて、1日でも早く立ち直って再生して欲しいと願うようになった。
頼むから、犯人に復讐なんてしないでくれ!と。


堺雅人をはじめ、山田孝之や綾野剛など実力派俳優の演技力をこれでもかというくらい堪能できるのもこの作品の魅力。
堺雅人は得体の知れない恐ろしさが滲み出ていたし、山田孝之は嫌いになりそうなくらいゲスでクズ。

好みは分かれるかも知れないけど、私はたまらなく好き。
けど胸糞悪くなるからリピートはしたくない。
キャサリン子

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