ヤギ

アイスマイヤー曹長の選択のヤギのレビュー・感想・評価

アイスマイヤー曹長の選択(2022年製作の映画)
3.5
オーストリア軍の鬼教官が新兵に恋をしてしまったという、驚きの実話。
展開がスピーディで、風景→人物というつなぎもメリハリがある。時折挿入される冬枯れ→新緑という心象風景も効果的でかなり観やすい。
そのつくりの巧さに「ハッピーエンド!おめでとう!」となりかねないが、その「わかりやすさ」のために棚上げにされていることも多い。それは、権力を利用した性加害、裏切られた家族の行方など、重い問題である。とくに前者については、ジャニー喜多川の件を想起せずにはいられなかった。
曹長本人にインタビューして創り上げたと監督兼脚本のダーヴィト・ワーグナーは語っているが、インタビュイーへの同情・同化から過剰に美談めいた仕上がりになってはいないか。曹長視点で物語を展開するにしても、周辺人物への取材に基づいた批判的な視点がない点は瑕疵だろう。90分でまとまっているのは凄いけれども、この辺りも含めて2時間くらいにしてもらった方が心置きなく絶賛できた気がする。
また、時折会場に笑い声が響くほどコメディタッチな演出もあったのだが、果たしてそこで笑わせてしまってよいのか? という疑問も。
映像作品としてはレベル高!となったのだが、いろいろと気になるところも多かった作品。同監督の次作は気になる。
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