KOTAYOSHIDA

みなに幸あれのKOTAYOSHIDAのレビュー・感想・評価

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
3.3
霊や呪いやオカルトで怖がらせるいわゆる"Jホラー"然とした作品とは一線を画す言ってみればA24以降の"今っぽい"ホラー作品が日本からも出てきたことは素直に喜ばしいこと。しかしながら面白いかと言えばそれなりに微妙な作品であったと個人的に感じた。

世界の本質、例えば限定商品を買えた人がいればその裏側には買えなかった人もいるように、誰かが幸せになれば誰かが不幸になる、そういう風に世の中はできている。私自身もやれ不況だ、やれ低賃金だと日々肩を落として生活をしているわけだが、まぁ~なんというかそれでも私の生活レベルの「幸せ」を享受できない人もいるわけで、皆が見ないようにして生きているそれを露悪的に提示してみせたことはとても良かったとも思う。同時に「比べる」からこそそういう「幸せは不平等」であるという思考体系になってしまうこと自体にも言及があって良かった。

ただ全体的に奇天烈な描き方をしている点は何とも呑み込みづらい。因習ホラーとして『ミッドサマー』の名前があげられているけど、あっちは本作のように不自然ではないんですよね。あの風習が当たり前として"自然"なこととしれ描かれているから怖い。そういう意味で本作もこれが当たり前のこととしてあるのであれば、もっと自然な感じで良かったと思う。老人夫婦の奇妙な行動が逆にノイズになってたかもな~と感じた。まぁあれをすることの"副作用"として棒読みのような言葉しか喋れなくなって不自然な行動をとるようになるのであればそれはそれでアリですが。ただやっぱり寓話的なフィクショナルな方向に寄ってしまっていたのは個人的に残念。はっきり言って風習として全然あり得るネタなのでもっとリアル寄りで良かったと思う。

あと奇妙さを演出するショットの数々、個人的に狙いすぎかな?と思いつつも、凄い研究しているんだろうなとも感じました。監督、多分かなり真面目な人ですよね。

とはいえ一石を投じたという意味ではとても意味のある作品。ホラー映画を作る体力のある企業は、例えこれが大ヒットしなくともこういう作品をしっかり積み上げていって頂きたい。
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