いけ

みなに幸あれのいけのネタバレレビュー・内容・結末

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

舞台挨拶付き上映で鑑賞。

誰かの犠牲によって誰かの幸せが成り立っているという現実社会の構図をホラー寓話として描いた作品。
主人公はその構図に気付き反抗するけど、周りから「世間知らずの夢想家」扱いされるのが、何だか現代社会の雰囲気をうまく切り取ってるなって思った。
そして、誰もが奴隷を飼っている訳ではなく、持っている人たちだけが持っている、持ってない人はどうやったって持ってる人と同じにはなれないという設定も面白い。
さらに、持ってる側の主人公は他人の犠牲によって自分の生活が成り立ってることに無自覚というのも面白い。

なぜ味噌?
あの味噌は奴隷たちによって作られてるの?
奴隷を飼ってることのメリットって何なの?
奴隷がいなくなってから主人公家族に吐血などの異変が現れるのは何?
など中々ハテナがたくさん浮かぶ話だった。

気になったのは主人公とあの男の子はどういう関係なの?
主人公は祖父母が暮らす街で育ってはいないから、幼馴染ではないよな?でも幼馴染みたいな感じだよな?って気になってしまった。

そして、ラストの主人公の表情。
どう解釈すればいいんだ!?
古川琴音がこの狂った世界をぶっ壊して行く展開かと思いきや、そうはならず。
どちらかというとこの世界の構図を悟って諦観してしまったような印象。
ラストの爽快感はないけど、現実世界で残酷な構図に気付きながらお前だって見て見ぬふりしてるだろと指を刺された感じだった。

そして、「みなに幸あれ」って。
いや、無理じゃん!ってなった。

人を怖がらせるためのホラーではなく、現代社会をホラー映画として描いているのが面白いなと、アフタートークを聞いて思った。
確かにA24配給でジャンル映画に止まらないホラー映画の良作がたくさん出てるのに対し、日本では中々そういう作品がない。
けど、本作はA24のホラー映画に通ずるものが確かにあるなと思った。
いけ

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