トゥーン

みなに幸あれのトゥーンのレビュー・感想・評価

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
4.0
やっぱり手持ちが一番。首絞めるシーンで、カメラが手持ちで派手に動くのが気持ちよかった。彼は自己犠牲ではなく、恋する人に首絞められて殺されたかったんだろうな。
誰かの不幸によって、私たちは幸せを得ている。平等を否定し、弱肉強食の世界を描くことで、世の不条理さを映し出す。しかし、幸せかどうかを決めるのは自分の心次第ではないか。生贄を用意しないと死ぬ。それは自分よりも劣っている人を見つけることによって、幸福感を味わいたいからだ。でも、それは一時の幸福感であって、幸福にはなれない。意図的に不幸な人を一人作れば助かるという設定だが、実際、そのような心持ちの人は、不幸な人を作り続けることでしか幸せになれないだろう。
中盤でこんなセリフがある。「他者の目が私たちの幸福の物差しになっている時点で私たちは幸せにはなれない」果たして、そう言った女性が死ぬことは映画的に正しかったのか。死ぬことで本当の世界に行けるという宗教じみたことを言っているため、死を選ぶのは当然だが。このセリフはこの映画の要のように思われるのに、その発言者を殺してしまうのはもったいない。
幸せな人、不幸な人の基準って自分で決めるしかない。何が幸せかは人それぞれ。不眠症の人にとって、眠れることが幸せだと感じるが、普通に眠れる人は眠れることに幸せは感じられない。まぁ、それは不眠症の人を不幸な人と一蹴してもいいが、些細なことで幸せになれる人はいい。結局、精神の充足が幸福であり、それは他者によってではなく、自分で感じるしか方法がない。すべては自己責任で、自分次第。
いま幸せって聞かれて、はい幸せですって即答できる人ってどのくらいいるんだろうか。でも、幸せか他人に聞かれるのって気持ち悪いな。まるで、悪意がなくても、幸せそうに見えていないみたい。
もっとこのテーマで撮り続けて、習熟したらリメイクしてほしい。
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