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みなに幸あれのAZのレビュー・感想・評価

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
3.5
誰かの犠牲の上に成り立っている幸せ。その社会の構造を極端化し、霊や呪い、超常現象的なものとして表現された作品。不気味な表現はなかなかよく、アリ・アスター監督っぽさがあった。
だが、表現の部分は良かったものの、その背景にあるものがあまりにも描かれてなさすぎた印象。この辺り、バランスが難しい。

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違和感を感じたのが、一部の地域や家庭が変なのではなく、この世界が全て変なのに、何故か主人公だけ普通ということ。ただ、それによって自分だけが取り残された感覚になるのが怖く面白い。

異文化に触れた時に感じる驚きを誇張して表現したような感じ。彼らにとっての普通が、自分にとっては異常に感じる。

男性が人工肛門っぽい感じだったのだが、味噌を印象的に表現していたためその辺りの関係を想像し勝手に気持ち悪く感じてしまったのだが、意図は最後までよく分からなかった。

お酒馴染み以外全員感情が読めない。何をするかわからない。だが、あまりにもその表現をしすぎていて、逆に予測できてしまうというジレンマが生じていた。どうせこうなるんだろうなと。この辺りのバランスって難しい。

最終的に、幸せを感じると同時にこの幸せの裏で誰かに不幸が起きているということも自覚してしまい、矛盾した感情に陥ってしまう複雑な心境が表情で表現されていた。

2階にいた女性は何を意図しているのか。世界は何かを抱えているという余白を感じさせた。

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余韻を残す系は好きなのだが、諸刃の刃だなと思う。色々と考えさせ、想像を促す作品になるが、見せ方によってはただ投げやりなものになってしまう。

不明すぎると想像するとこまでいかないで終わってしまう。ヒントのようなものがもっと欲しい。あと勇気を持ってBGMを使わずに怖さを表現して欲しかった。
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