MasaichiYaguchi

霧の淵のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

霧の淵(2023年製作の映画)
3.7
長編商業デビュー作となる村瀬大智監督の映画では、奈良県南東部の山々に囲まれた過疎化が進む静かな集落を舞台に、存続の危機にある旅館を営む或る家族の姿を四季を通し、その過去、現在、未来が描かれていく。
周囲を山々に囲まれ、かつては商店や旅館が軒を並べ、登山客などで賑わった奈良県南東部の静かな集落、12歳のイヒカは、この地で代々旅館を営む家に生まれた。
父は数年前から別居しており、旅館に嫁いできた母の咲は、義理の父であるシゲと旅館を切り盛りしている。
そんな或る日、シゲが突然姿を消してしまう。
旅館が存続の危機を迎える中、イヒカの家族に或る変化が訪れる。
主人公イヒカ役を奈良県出身で本作が映画初出演となる三宅朱莉さん、イヒカの母・咲役を水川あさみさん、父・良治役を三浦誠己さん、祖父・シゲ役をベテラン俳優・堀田眞三さんが夫々演じている。
映画の舞台となった奈良県の川上村は、2018年に人口減少率で全国でワーストになってしまった村で、正に本作で描かれた人が住まなくなってしまった集落、ダムの底へと続く旧道がある、かつての人々の生活の痕跡が残る場所。
かつて日本にあった人々の生活や環境、それらが失われつつある今を、恰もいとおしむように本作は繋ぎ止めていく。