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霧の淵のritsukoのレビュー・感想・評価

霧の淵(2023年製作の映画)
3.6
山々に霧がかかり、緑と白のコントラストは誰しも見惚れてしまう。静寂な日常。そんな山奥にあるひっそりした旅館を営む家族。祖父が姿を消した後、歯車がくるう。物語は曖昧な表現が多く、観た人に委ねるところが多いのだがわたしは亡くなった祖父のことをふと思い出した。祖父の隠れ家とみられる部屋に寝そべってラジカセを流しながら眠る。祖父が現れ、一緒に寝そべる。きっともう居ないだろうけれど、さっきまで居た人がそこに居ない寂しさ。虚像。触れたり会話をすることもできない。そして現実。生活への不安。大人は泣きながら化粧をして、日々生きてゆかねばならぬみたいなことを思っていたのと経験したこともあるのでお化粧のシーンは感情を持っていかれた。ゆるやかな田舎でも確実に雲のように時が過ぎてゆくこと。子どもだからわからない、は嘘。わかっているのに何もできないやるせ無さ。子どものほうがよく知っているよね。河瀬直美監督がアシストしているとのことで、映像美。結構に眠たい。言いたいことはわかるが、これにもう少し気合いの入った台詞・脚本があれば最高なのでは。
キャプションにあるように「すべて、永遠じゃない。」は実家に居た子どもだった頃の自分に教えてあげたい。美しい景色も、家族で食卓を囲うことも、桜が咲く頃も。
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