gigigi

波紋のgigigiのレビュー・感想・評価

波紋(2023年製作の映画)
-
ポスターがよかったので思わず鑑賞。

萩上さんは、優しい人なんだなと思った。もし私が結婚していた夫が急に出て行って、ある日フラッと帰ってきたら、たとえ癌だとしてもご飯を作ってあげるキャラクターを書き上げられない。
主人公の主婦もきっと荻上さんと同じように根がいい人だからそう描かれているし、夫への復讐を描く際にネットで検索したら上の方にでてきたのが歯ブラシの件だったなんてインタビュー?で答えているあたり、男や他人を本気で憎んだことがないんだな、と、優しい人なんだな、と私とは違う次元に住まわれている人種なのだと遠い目をしたくなった。

病気と宗教は切っても切れない関係で、まさに私の母も同じようなことをしそうになっていた。新興宗教クソ喰らえ派の娘の私は、ものすごい勢いで否定して、勉強会とやらの時点で目を覚まさせることに成功したが、今思えば、藁にも縋る思いだった母を作り上げてしまった娘の私にも責任があったなあ、と亡くなった今はそう思う。
ただ、主人公の域までいってしまった人を側から見ると、自業自得だとか気が狂った残念な人、とも思えるか不思議なものだ。

もっともっと胸糞悪くなっていくのかと期待していたものの、なんだか丸く収める感じにストーリーは進んでいき、最後はなんかしらんが晴れやかにフラメンコ。

主人公の中で、水木さんとの出会いが全てを変えて行ったわけだ。
ただただいい人で聖人みたいな人間が嫌いな私は水木さんのような人は大好き。
最初はなんかいやなおばさん、だった主人公だったけど、平気で差別したり、憎たらしかった夫が棺桶から落ちそうになったところで爆笑しちゃう主人公は好き。

人それぞれが持つ波紋を、わかりやすいチープなCGで表現した演出にはハテナだ。そこまでしなくても観客はわかるのに。なぜあんなにもわかりやすく表現したのか。

なのに、後半、宗教の親玉からさらに高い商品を勧められて、涙ぐむだけでシーンをぶったぎる、どちらとも取れそうな表現で観客に投げる演出もある。
荻上さん、どっちなのー?!

荻上さんの作品は初体験(かもめ食堂は観たいと思いつつも観れてない。なんとなく天邪鬼で)なので、楽しみにしていたが、、いや、楽しめはしたのだが、、「こんな悪いことも思いつけるんですよ?!」としたかったんだろうけど監督の「悪い人でない」ところが浮き彫りになってしまった気がする…


追記
夫が勉強会に潜入?してるシーン、一生懸命踊りについていくシーンが最高すぎて。
古畑の間違われた男の風間杜夫を彷彿とさせる素晴らしい演技だった
gigigi

gigigi