ぶみ

波紋のぶみのレビュー・感想・評価

波紋(2023年製作の映画)
3.5
絶望を笑え。

荻上直子監督、脚本、筒井真理子主演によるドラマ。
長い間失踪していた夫が突如帰ってきたことから、日常が変化していく主人公の姿を描く。
主人公となる須藤依子を筒井、夫を光石研、息子を磯村勇斗が演じているほか、津田絵理奈、安藤玉恵、江口のりこ、平岩紙、ムロツヨシ、柄本明、木野花、キムラ緑子といった、日本を代表する個性派が集結。
物語は、原発事故の放射能が怖くて家族を置き、一人失踪した夫が突然帰って来るという中々斬新な設定でスタート、失踪中、依子自身が謎の水を売りにする新興宗教に傾倒していることを皮切りに、夫の親の介護、障害を持つ彼女と結婚しようとする息子、ゴミ屋敷、パート先でのクレーマーにホームレス、相続問題に未承認薬と、ありとあらゆる問題が降りかかってくることになる。
とりわけ、もはや日本の映画界において、名脇役として一二を争う存在と言っても過言ではない柄本に光石、若手俳優の中でも引くて数多で、飛ぶ鳥を落とす勢いの磯村がキャストに名を連ねている本作品を見逃す手はない。
また、新興宗教の勉強会のシーンが時折挿入されるが、当事者は至って真剣ながら、側から見ると滑稽以外の何ものでもないその様子が、毎日どこかで同じようなことが行われているかと思うと、笑うに笑えないし、そのメンバーを演じた江口と平岩の慇懃無礼な喋り方は、もはやホラー。
加えて、障害者差別の問題を、歯に衣着せぬ表現で伝えて来たシーンは、あまりにも人の真理を突き過ぎており、私の本心も見透かされたかのようで、一瞬にして心を抉られることに。
とにかく、前述のような、笑うに笑えない展開の連続で、通常なら映し出さない現代社会の裏を見事に顕在化させているとともに、日々穏やかに暮らしたいだけなのに、少しの波紋が、瞬く間にぶつかり合っていく様を、ブラックユーモア満載で描き出した一作。

切磋琢磨いたしましょう。
ぶみ

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