クリーム

波紋のクリームのレビュー・感想・評価

波紋(2023年製作の映画)
4.0
筒井真理子さんは、好きなので観たいと思ってました。やっぱり素晴らしかったです。誰もが心の中に持つ本音をさらけ出すブラック·ユーモアたっぷりのドラマ。建前と本音が楽しい。人間何処かでガス抜きしなきゃ、そりゃあ壊れる。そして、やはり大切なのは本音で話せる相手。面白い作品でした。

震災の後、突然、夫が蒸発。寝たきりの義父の面倒をみて、1人で葬式も出した、1人息子は九州の大学へ行き、そこで就職した。須藤依子は、救いを求めて新興宗教にのめり込む。そんなある日、夫が何年振りかに突然帰って来た。依子の感情は激しく揺れ動くのだった。



ネタバレ↓



帰って来た夫は癌を患っていて、治療に必要な高額費用を父の遺産から出して欲しくて戻って来た。謝りもしないクズ夫。 依子は怒りでぶちギレそうになるのを必死で抑える。新興宗教の教えで、人を呪うと結局自分に帰って来ると言う事で、我慢した。
息子が久しぶりに帰って来たが、6歳年上の障がいのある女性を連れて来て、結婚するという。 到底賛成できない依子は、女性に息子と別れてほしいと伝える。彼女は、息子から母は頭のおかしい人だと聞いていると面と向かって言う。そして、私が息子さんにこの話をすれば、 息子さんと縁を切る事になるけれど、いいんですか?と脅します。これは、どっちもどっちだけど、私は依子さんの味方だ!もう少し謙虚でも良いだろう💢。私なら呪ってやる!まあ、悪いのは息子だが…。
そんな中で、彼女の心の拠り所になったのは、同じ職場で依子に声をかける清掃員の水木さん。水木さんは、旦那に仕返ししちゃいなよ。とか依子の立場で聞いてくれ、話してくれる。プールのサウナ室で「男なんて甘やかしたら付け上がるだけよ」と言った瞬間、サウナ室の男達がスーッと引けて行くのは笑った。
そんな水木さんが入院するのだが、飼っている亀の世話を引き受ける。
水木さんの部屋は震災の日から、片付けられずゴミ屋敷となっていた。そして、生きていると思っていた息子さんは、幼少期に亡くなっていた事も解った。小さな仏壇を見た瞬間、私も依子と一緒に泣いてしまった。
旦那が庭で倒れ、亡くなった。新興宗教の洗脳も解けた。息子と葬儀を済ませ、依子は昔習っていたフラメンコを雨の中、狂ったように踊って幕を閉じた。

水木さんの言葉は観賞者を代弁するかの様でスッキリした。私ならあのクズ夫は絶対許せない。息子も酷い。常識のある良い人間であろうとする依子が、水木さんと出会い自分を解放して行く姿は気持ち良かったです。こうあるべき、こうすべき、それは建前で、本音は違う。本音をぎゅうぎゅうに閉じ込めたら、窒息してしまう。表立って言わないのが大人だけど、友達や親しい中の人には打ち明けないとやってられない事もある。依子が苦しかった時に本音で話せる友がいたら、新興宗教なんて必要なかったハズ。これからは、あのフラメンコの様に大胆に激しく生きて行くのかなと思わせるエネルギッシュなエンディングも前向きで良かったです。
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