猫脳髄

波紋の猫脳髄のレビュー・感想・評価

波紋(2023年製作の映画)
3.4
東日本大震災という巨大な「波紋」から始まる家族の揺らぎ。一介の主婦とその家族の崩壊と再構築の人間関係を水面の波紋に見立てて映し出す。

荻上直子のユルい作風からするとシリアスで直接的なシナリオに一見驚くが、登場人物が出来事をとおして過去の傷から再生する過程というモティーフ自体は、実はこれまでと通底していることがわかる。

抑圧され、新興宗教にハマる主婦の内心をフラメンコのパルマ(手拍子)として随所で用い、ラストで喪服の彼女が晴雨のなかをずぶ濡れになりながら踊り狂うことで爆発させるという趣向になっている。

主役の筒井真理子や夫の光石研ほか役者は申し分ない。江口のりこと平岩紙が同じフレームに収まっているなんて笑うしかない。ただ、ホームドラマ調から逸脱できないカメラワークや心理描写に用いるCGI表現があまりよくなく、荻上の演出にしては安直に思え、その点で評価が伸びない。
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