HaHa

波紋のHaHaのネタバレレビュー・内容・結末

波紋(2023年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

ここのところ、川べりのムコッタ、バーバー吉野、レンタネコと荻上監督の作品を見ていたので、最新作も見てみようとWOWOWで録画して視聴。
更年期を迎えた女性の鬱屈した日々が描かれていて、途中しんどくなってしまった。義父の介護や旦那の失踪、パート先でのクレーマー。全てを黙ってぐっと飲み込んでしまう主人公。自らしんどい方向に行ってしまっているようで、きっとこんな風にNOと言えない人っているよね。とは言え、信仰宗教のような団体にのめり込んでみたり、息子が連れてきた女性を傷付けたり、と、単純に可哀想と言い切れない側面もあって、ああ、人間だなあと思う。
パート先で水木さんと親しくなって、少しずつ何かから解放されていく感じがするシーンだけがほんの少し救いでした。
自分が息子の連れてきた女性に対して差別的なことを言ったとズバリと指摘してもらったり、クレーマーに対して一矢報えたと思っていた出来事も、その勇気は認めてくれつつ、違う視点からの見方も付け加えてくれたり。水木さんの言葉は、上っ面だけの思いやりに満ちた信仰宗教の仲間たちとの言葉とは全く違う、血の通った言葉で。
その水木さんが、ゴミ屋敷化した部屋に住んでいて、息子さんのことも嘘をついていたことがわかっても、より深く水木さんに関わっていこうとする。それは少しずつ人間らしさ、と言うか、本来の依子らしさを取り戻して行く過程のように見えた。猫が立ち入ったり、夫が踏んでしまっただけで怒っていた大切な枯山水の庭に、水木さんの亀が入っても怒らなかったもの。
枯山水の庭や宗教は彼女なりの降りかかる不幸から自分を守る盾。誰にも自分の心を乱されたくないと言う気持ちの具現化。
もともと信仰宗教に走ったのは夫が家を出たからで、その行動が今度は息子を自分から遠ざけた。宗教にハマる自分を見ていたくないから遠くの大学に進学を決めたという息子の胸の内は知らないかもしれない。だけど、宗教が自分を守ってくれないと言うことは、愛情を感じない夫を世話をせざるを得ない鬱屈した心の内を知りもしないで、夫のためにと高価な水を勧める橋本の言動を見て気がついたのではないだろうか。
夫が死んで、ようやくその心を占めていた大きな鬱屈から解放されて、枯山水の美しい波を蹴散らして踊る依子。依子にはもう宗教も枯山水も必要ないのだろう。
荻上監督っぽくない作品だなあと思ったけれど、2005年に異国でいろんなしがらみから逃れて自分らしく生きる女性を描いたかもめ食堂から、20年近く経って更年期世代の女性が、いろんなしがらみから解放されて自分らしく生きる道を探す物語を描いたと思うと、それほど大きくは逸れていないのかなあとも思ったりしました。
HaHa

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