"救いようもない"で構成された格闘。気付けば芯に秘められたアドレナリンとの勝負になっている。目覚めることができただけで価値はあった。
過去の藤井監督の要素を感じさせつつ、シネコンエンタメ映画(意味深)に成り上げる手腕は新世代を画した。あとは色んな意味での濃密さが欲しかったかも。
"最高まで行く"かは人を分けるなと思った。
リメイク元の韓国版が極めて好評だというのは分かっているが、そもそも自分は藤井道人推しの邦画好きという身分で劇場に行くので、展開を知らぬまま裏切られるために観ずに行った。
展開の練り具合はさすがと言ったところなんだけど、もはやどこ由来のものなのか。やはり観客が興奮するのは同時制を裏から語る伏線回収なんだなと思わされた。そして中盤のそこに高揚しただけに、それが一番の盛り上がりどころに取れてしまったのは惜しい。
セリフは少し甘いと思った。もっと知的な言い方ができるはず。
藤井監督のスタイリッシュさを引き出すのが撮影。まぁ今回もいかにもな今村圭佑で大興奮しながら観させてもらいました。
"行動の省略"などでテンポ感を重視した、極めてPV的な映像の文脈が、映画に取り込まれ始めている。最近自分が撮影技術について少しずつ知識を深めていることもあって、仕掛けにはさまざま興奮した。露骨な広角で綾野剛の絶望を映し切ったショットや、藤井作品らしい、夜の場面でフレームレートが落ちて見えるブレ。
なんだかんだで救いようのない奴らばっかりなのが面白い。殺人を非道とも捉えないドライさが、恐いけど結局は爽快。リメイク元の描写はもっと酷なんだろうな...いつか見比べてみたい。
追記 : (たぶん)葬儀場に停まってた工藤と矢崎の車のナンバープレート、"3・89"(砂漠)と"11・22"(いい夫婦)といういかにもな皮肉に見えてよかった。見間違いかもしれん。
