ぶみ

最後まで行くのぶみのレビュー・感想・評価

最後まで行く(2023年製作の映画)
4.0
1500本目となるレビューはこちら。

マズい男vsヤバい男

藤井道人監督、岡田准一、綾野剛主演によるクライム・サスペンスで、キム・ソンフン監督による2014年公開、韓国製作の同名作品のリメイク。
人を轢いてしまった刑事が、事故を隠蔽しようとしたところ、全て知っている旨のメッセージが届いたことから巻き込まれる騒動を描く。
オリジナルは鑑賞済み。
主人公となる刑事、工藤を岡田、彼にメッセージを送った県警本部の監察官、矢崎を綾野が演じているほか、広末涼子、磯村勇斗、駿河太郎、山中崇、杉本哲太、柄本明等が登場。
物語は、事故を隠そうとする工藤と、工藤が轢いた男の遺体を欲しがる矢崎の追いつ追われつの攻防が描かれており、展開自体は概ねオリジナルをトレースしている反面、主人公の妹が、別れる直前の妻に変わっていたり、監察官が思いのほか早めに本性を表してきたりと、細かな差異も結構見受けられる。
何より、オリジナルでは韓国の風習である土葬が、当然本作品では火葬となるため、どのように、その変更を処理することになるのか気になっていたものの、違和感なく、かつ大勢にも影響なく展開していたのは流石と言えるもの。
また、前述のように、早々に矢崎の本性が暴かれており、それに伴って日本では撮影が厳しかったせいか、序盤のハイライトの一つであったカーチェイスが廃されてしまっているが、その分矢崎の背景や、柄本演じる暴力団組長が絡んできたりと、本作品独自の要素が盛り込まれていることから、サスペンス色はオリジナルよりも勝っている印象。
何より、岡田主演ということで期待されるアクションシーンはそんなに多くはないが、それでも事故がバレやしないかと常に怯える工藤や、狂気をこれでもかと出してくる反面、エリートコースを歩もうとする中間管理職ならではの悲哀を持つ矢崎を演じた主演二人の演技は圧巻の一言。
また、工藤が乗るクルマが本作品では何になるのか楽しみにしていたところ、まさかの今や旧車とも言える初代日産・プリメーラだったことや、舞台が私の住む愛知県の架空の都市、埃原(あいはら)市となっていることから、愛知県や三重県を中心としてロケが行われており、どこかで見たような光景が見受けられたのも見逃せないポイント。
リメイク版は往々にしてオリジナルを上回ることが少ない中、本作品に関しては当てはまらず、オリジナルを観ていれば観ていたで展開や雰囲気の違いが楽しめ、逆にどちらが初見であっても、クライム・サスペンスとして満足行く仕上がりとなっているため、誰がどう最後まで行くかの結末も含め、あとはもう好みの問題であり、予告編で見せ過ぎているきらいがあるものの、私としては本作品に軍配を上げたい良作。

マネロンって、やつだな。
ぶみ

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