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最後まで行くのinotomoのレビュー・感想・評価

最後まで行く(2023年製作の映画)
3.9
刑事の工藤は、危篤の母親の元へ駆けつけるため、土砂降りの雨の中、車を走らせていた。妻からの電話に加えて、警察に内部監査が入るとの連絡を受けて動揺する工藤は、誤って道路に飛び出してきた若い男をはねてしまう。取り乱している工藤は、遺体をトランクに入れてその場を立ち去る。
同名タイトルの韓国映画を日本でリメイクした作品。監督は「新聞記者」「ヤクザと家族」の藤井道人。

ネタバレあるかもしれませんので、ご注意を。

数日前に、韓国のオリジナルを鑑賞。そちらがめちゃくちゃ面白かったので、気になってリメイク作も鑑賞。途中までは、韓国版と同じように物語が進み、オリジナルが良かっただけに、これはイマイチな出来上がりになってるかも?という思いが頭をよぎったし、岡田准一と綾野剛のキャスティングを逆にした方が面白いのでは?と思いながら見てだけど、途中、日本版にしかないオリジナルのストーリー展開になってからが、俄然面白かった。特に綾野剛が演じた矢崎の人物像と背景が日本版ならではの部分なんだけど、これがすごく良かった。工藤との対比みたいな描き方も面白かったし、矢崎の行動に説得力を持たせていたように思う。韓国版のチョ・ジヌンは、得体の知れない人物で、そこまで詳しく背景も描かれていない分、不気味さも増していたし、何と言ってもオーラと存在感が半端ないから、綾野剛ではちょっと物足りないかなと思ったけど、オリジナルのキャラクターになっていたのが成功したと思うし、追い詰められて、顔をピクピクさせる神経質な矢崎を演じた綾野剛は、私の好きな綾野剛だった。

工藤を演じた岡田准一は、困った時の情けない表情に味があった。彼の妻役の広末涼子は、不満とストレスを抱える役が似合う。工藤が車ではねてしまうチンピラを演じた磯村勇人は、もうすっかり藤井組の俳優といった感じで、存在感を発揮していた。工藤の同僚を演じた駿河太郎も良かった。

カメラワークやテンポ感、迫力あるバイオレンスなど、演出も良かった。一番良かったと思ったのは、クライマックスの工藤と矢崎のバトルシーン。あの場所、絵面が最高。札束の舞う中の戦いって初めて見たかも。

ただ、妻との会話でちょっとしんみりさせる場面は、個人的にはなくてもいいかなと思ったし、ピンチに娘を巻き込む展開もあまり好きではなかったかも。男だけの暑苦しいドラマで良いような気がした。ユーモアも若干足りないかも。
韓国版の、潔い爽快感あるラストシーンが好きだったので、ラストの展開も、うーむ、と思ってしまったけど、韓国版を見てない人なら、充分に楽しめる作品だと思う。逆に、日本版しか見てない方には、ぜひ韓国版を見ていただきたい。絶対楽しめると思う。
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