ノワールアクションエンターテインメントとして綺麗に整っていたと思う。
原作の韓国映画は未見だが、ディテールよりも画面のダイナミックさやドライブ感で観客を乗せるところをよく引き継いでいたのだろう。
藤井道人監督は『新聞記者』や『アバランチ』から入ったので、どうしても社会派監督として観てしまうが、本作は比較的頭を空っぽにして楽しむことができた。暴力的な要素はあるが、映画の性質としてはカップルや家族と観に行くのに向いてそうである。
岡田准一は行動が行き当たりばったりすぎて少しイライラしたが、綾野剛が出てきたあたりから一気に予測不能になっていき、緊張感も増した。
ポスターのキャッチコピーが「マズイ男vsヤバい男」というもので、綾野剛は「ヤバい」キャラクターとして描かれるが、ヤバいのは彼が置かれる環境そのものである、という構造が興味深かった。
政略結婚の地獄の始まりを描くのが上手すぎるし、何よりあの新婦役のキャスティングが秀逸すぎる。
綾野剛は、彼女の前ではさぞかし品行方正に振舞っていたのだろうと思うが、両親への手紙の音読練習を聞きながら、テーブルの下で携帯を見ながら顔を歪めるシーンは痛快だった。
他の藤井道人作品と同じく、青みがかった暗い画面に、片田舎が舞台とは思えない豪華な装置がキマっていた。
音楽の配置も作品全体の推進力を作っていた。
