スペイン版シャッターアイランドとも言える作品です。
私立探偵として依頼を受けたアリスは調査のためパラノイア症候群を装い精神科病棟へ潜入するというあらすじですが、アリスの状況が二転三転し、彼女を信じていいのか疑っていいのかハラハラする上質のサスペンスです。
中盤まではアリスの行動と言葉を信じていられますが、よもやのちゃぶ台返しがあり、そして更に観ている側の思い込みをひっくり返す終盤の展開が素晴らしかったです。誰を信じる?と問いかけるような構成と、奇妙ながらも個性的な患者達が加わることで一層何が真実なのかを推し量れない困惑が生じて目が離せません。
ただ、時系列をちゃんと分かりやすく提示していないので現在軸と過去軸が入り乱れており、話が少々分かりにくい部分はありました。
時間軸で言うと
過去:アリス入院〜調査
現在:火事が起きた夜
となりますので、過去軸の展開も火事が起きた夜へ収束してゆくことになります。
ラスト、満を辞して登場したドナディオ医師の「また何かしでかしたのか?」というセリフで、再びアリスが正常であるのかそうでないのか、信じたものが揺さぶられ明確な答えがないまま終わるという最後の最後まで主人公を信用しきれない物語というのは初めてでした。もどかしさもあれど、想像が膨らみ続きが観たくなるような出来映えです。
「みんな何かを探してる。それを見つけるには近道が狂気なんだ」
とある患者のこのセリフがとりわけ印象深く、その言葉が正に探偵としての素晴らしい才能を持ちながらもどこか危ういアリスの有り様を示しているようでラストを思い出させます。
何かを探すために狂気が必要であるならばアリスはおそらく本当にパラノイア症候群を患っている可能性が高く、彼女の深層に深く食い込み彼女の妄想に合わせて立場や名前を変えるドナディオという男はアリスをその病ごと制御している人物なのかもしれないと思いました。
是非続きでアリスの真実が知りたいですね。とても面白かったです。